女性「9条の会」ニュース45 号 2018 年7 月号

 

1面  

   海を呑み、人を喰う政治に終わりを                       安里 英子(沖縄大学講師、ライター)

                                                                

大浦湾。どのように美しい海であったか。入江に面した久志、辺野古、安部、嘉陽などのムラではサンゴの浅瀬で魚を獲り、藻を集める暮らしぶりであった。ジュゴンの親子の住処は、浜から近いサンゴのくぼみ。戦後食べ物がないときには、ジュゴンが我身を人びとに分け与えた。浜につづく森には、ヤマモモが実り、青年男女がそろって木の実をとり、薪をひろった。そんな暮らしも、九〇年代にはリゾート開発で、消えた。
今、基地建設で辺野古の海は埋め立てられようとしている。安部集落の浅瀬にはオスプレイも墜落した。埋め立てのための、護岸工事がほぼ終了し、防衛庁は八月一七日から辺野古の海に土砂を投入する。護岸工事とは埋立部分の周辺を砂利で囲ったもので、そのための工事をこれまで一日に延べで三五〇台から四〇〇台ものダンプで砂利を運んだ。想像してほしい、巨大なダンプが海を埋め立てるために基地の中に入っている。それを食い止めるために何百日、数千日も多くの市民が道路上に座り込み、あるいは海ではカヌーや船で阻止行動をしてきた。女性たちはできうる限り、陽に焼けないようにスカ
ーフで顔を覆い、深く帽子をかぶっても、連日座り込んでいる人たちはほとんど火傷状態だ。日毎に市民への弾圧は厳しくなり、これまでの逮捕者は九〇人にのぼる。
 七月一四日、辺野古ではとんでもない工事が始まった。米軍キャンプ・シュワーブ工事用ゲート前に、柵高さ四㍍、長さ四五㍍を設置した。柵の前にはさらに重量のある物体を築き、市民が入り込めないようにした。
これまで市民は警察車両の間や機動隊の隊列に挟まれるようにして阻止行動をしてきた。ごぼう抜きにされる際、肋骨が折れるなどのけが人が続出している。
 このような切羽つまった状況の中、一五日からは県庁前広場では、沖縄県知事に対して「辺野古埋立承認の即時撤回」を求めて座り込み行動を開始した。一方、翁長知事は二七日に記者会見をし、二〇一三年に前知事が埋め立てを承認したことに対する「撤回」を行うと表明した。ただそのためには防衛庁の意見を聞くための「聴聞」が必要となる。そのため撤回そのものは数週間後となる。
 私は、基地闘争は全国の地域がそれぞれに現場だと思っている。日本の政治が変わらなければ、基地はなくならない。東アジアの状況は大きく変わろうとしている。日本で変革の波が起こらなければ、日本は世界に取り残されてしまうだろう。人を喰って(犠牲にして)生き延びる政治は終わりにしなければならない。憲法で保障された「平和的生存権」は誰もが享受されなければならない。
                                                             
 
                                       

2面〜6面                 女性「9条の会」憲法学習会      
                                                  
日時 2018年7月13日  於 文京区立男女平等センター
 
                               憲法問題をめぐる最新情勢

                    
           
       
                   講師 渡 辺 治 さん

              
              (一橋大学名誉教授・専攻は憲法・政治学者・九条の会事務局メンバー)



 4月27日に、南北の首脳会談が行われて、6月12日には米朝の首脳会談が行われたことで、朝鮮半島の非核化と平和という問題を、軍事的な力によって解決するのではなく話し合いによって解決する方向が出ました。朝鮮半島問題を軍事的な解決ではなく、話し合いによる解決を明確に米朝会談が出したということで、これは極めて大きな平和への動きです。しかし安倍改憲はこの方向と全く逆の方向を狙おうとしています。安倍改憲の狙うアジアと日本の平和安全保障の考え方と、あの米朝会談で提案された考え方では、全く別の道が提示されています。私たちは安倍改憲を阻むことによって、トランプと金正恩の間で作られているこの方向を、何としても不可逆的に私たちの力で前に進めたい。そして元に戻すことができないような状況を作り、東北アジア全体の平和と安全保障に拡大していく。これをやれるのは、日本と韓国の国民の力でしかないと思っています。そういう意味で、安倍改憲を阻むことの意味が益々大きくなって行くわけです。
 安倍首相は今年の年頭記者会見で、今年こそ新しい憲法を国民に示すときだと訴え、通常国会の開会日には自民党の議員団を集めて「今年こそ自民党が結党以来念願にしていた憲法改正を実現する年だ」と言って今年をスタートしたのでした。ところが彼の思惑通りにはいきませんでした。最初は厚労省の資料から始まって、その内に森友問題が起こり、加計問題も起こり、自衛隊の日報隠しの問題も起こり、最後は財務次官のセクハラ問題ということで、安倍政権の支持率はぐんぐん下がって、改憲案を国会に提出することはできなくなりました。
 しかし安倍首相は改憲を諦めてはいません。彼はそのためには何としても9月の総裁選には勝って、来年の参議院選挙に勝ち、改憲を実行するという形で動いてきます。彼は執念として改憲を実現しようとしています。

■なぜ今改憲?

   憲法九条は傷だらけになっています。しかし、憲法九条があることによって日本の軍事化は極めて大きな障害物を抱えています。だからこそ安倍首相はこの障害物をなくしたいのです。つまり憲法は死んでいないということなのです。このことは是非ともはっきり認識していただきたいと思います。
 日本国憲法九条の第1項は、第二次世界大戦によって数千万もの人々が死んだことへの反省を踏まえたものです。第2次世界大戦後にできた憲法の中では、戦争の放棄に関する条項はイタリア、フランスなど結構入っています。でも日本国憲法が他の国の憲法に比べて極めて大きなインパクトを持ち、世界の市民に支持されるに至ったのは九条の2項です。一切の問題を武力では解決しない、戦争を放棄する。2項は、そのために軍隊を持たないとしていますが、これが日本の軍事化にとって大きな歯止めになってきたのです。
 したがって、占領が終わって講和になって以降、アメリカは「憲法を改正しない限り日本の若者を極東の戦争に動員することはできない」と考え、日本の保守支配層も「こんな憲法があったら日本は再軍備することもできないし、大国になることもできない」ということで改憲にチャレンジし続けて来ました。
 政府は、「自衛隊は憲法九条が
禁止している軍隊ではない。戦力ではない」という解釈をつくり、どこの国でも侵略をされたらそれを撃退する権利がある。九条2項は軍隊の保持を禁止しているので、自衛隊は「自衛のための最小限度の実力」だという説明をしてきました。この解釈が結果的に65年以上にわたって未だに続いているのです。続けざるを得なかったのです。続けざるを得なくしたのは私たちの運動なのです。
 しかし、ベトナム戦争に荷担した自衛隊に対し、さまざまな違憲裁判が起こりました。
 そこで政府は「自衛隊は自衛のための最小限度の実力なのだから、海外派兵はしない。海外での武力行使はしない。集団的自衛権は行使しない」と答弁します。自民党政権はこれを言うことで、国民の「自衛隊は違憲だ」という声が収まればいいと思っていたのです。
 これが、90年代に入って、アメリカから自衛隊に対して「共に血を流せ」と言われたときに、大きな歯止めになって、アメリカの言う通りにできなくなってしまったのです。
 それだけでなく、この60年来の野党や市民たちの運動に対して、自民党政権は、「非核三原則」と「武器輸出三原則」をつくって、自衛隊は合憲だという形を国民に示してすり抜けてきたわけです。もし武器輸出三原則がなければ、日本の大企業は、不況になったら戦車をつくり、ミサイルをつくり、携行ミサイルをつくり、航空機を作るということをやっていたのです。ところが輸出ができないために手を出せなかった。トヨタなどは最後まで戦時中の軍事技術を持っていた工員、職員たちを抱え込んで、いつか日本で武器生産が始まったらこの人たちを使おうと、その中には原爆を開発しようとした研究者もいました。そういう人を企業で雇って温存していたわけです。
 しかし、そういうこともできなくなりました。私たちの運動の力が大きかったのです。
 湾岸戦争以来、アメリカ政府はものすごい圧力を日本に対してかけてくるようになりました。それまでは「防衛費を上げてアメリカの兵器を買いなさい」「アメリカ軍に自由に使える基地を提供しなさい」という要求だったのですが、90年代以降は「それだけでは駄目だ。自衛隊もアメリカ軍と共に戦い、共に血を流せ」という要求に変わったのです。そのときに「集団的自衛権を行使しない」「海外派兵をしない」という憲法上の制限が重くのしかかります。その中で自民党の改憲への動きが強まります。


■第2の改憲の波

 90年代以降、25年の間に、安倍首相の案を含めると43もの改憲案が出されます。自衛のための軍隊を持つだけでなく、海外でアメリカの戦争に荷担できるようにするための改憲です。ところがそれに対して市民が立ち上がり、自衛隊の海外派遣に反対する運動が起こりました。そこで自民党政権は「解釈」で自衛隊を外へ出すことにします。小泉政権は「海外派兵というのは武力行使を目的に海外に行くことであり、武力行使以外の目的で行くのならいいのだ」という解釈をするわけです。
 私たちは海外派兵と言いますが、政府は絶対に言いません。新聞も書きません。海外派遣といいます。しかし、そういう解釈をしても、海外で武力行使をしないという原則は守らざるを得なかったのです。だから自衛隊はイラクのサマワにいても、バクダッドにいても、銃は撃てなかったのです。アメリカや日本の支配者にとってこれは極めてまずいのです。九条を変えなければ鉄砲も撃てないし、戦場にも行けない。やっぱり改憲をやらなくては駄目だという動きが再度出てきたのです。
 ところが、2004年に、この改憲の動きに危惧を持った九条の会がつくられ、どんどん増えていって、集会や、国会を取り巻くデモ
をやる。それによって、改憲案は国民投票をやれば絶対勝てないという状況になり、安倍改憲は挫折をしたわけです。そこで自分の祖父である岸信介の思い、それと自分自身の失敗のリベンジが、今安倍改憲を支えている執念の要因だと思います。


■安倍首相はどんな改憲を
     やろうとしているのか


 憲法九条の中で、彼らにとって最もまずい障害物は九条の2項です。これを削除して軍隊を入れる規定を入れるのが改憲案の常識で、今まで出てきた改憲案はみなそういうものなのですが、2017年5月3日に出した安倍首相のビデオメッセージによると、改憲案はそれとは全く違って、1項2項をそのままにして、九条の3項で「自衛隊は保持できる」とする改憲案になっています。これは彼らにとって「最も憎っくき敵」を残した改憲案なのです。この案は2004年に公明党が加憲案として出したものです。
 公明党は1999年から自民党と連立政権を組んでいます。しかし公明党は「平和と福祉の党」と言ってきています。公明党の婦人部が憲法九条の改正に反対なのです。
 そこで幹部たちは悩んだ末、みんなが合意できるように自衛隊を憲法に入れましょうと、これは改憲ではなく加憲であるということにしたわけです。この方向は第6回大会で提案されました。今回安倍さんがやったことは、この公明党案をそっくりそのまま頂いてしまったのです。これが特徴です。
 もう一つ、自民党の改憲案は九条改憲と「知る権利」とか「環境権」とか「犯罪被害者の権利」のような甘い飴を用意している特徴があります。九条だけの苦い薬だったら国民は呑まないからです。この甘い飴も安倍首相は提案しました。今まで提供した飴は「知る権利」、冗談かと思いますよね。「森友はどうなんだ?」「加計はどうなんだ?」という話になりますが…。原発の再稼働を推進している最中なのに「環境権」、あとは「犯罪被害者の権利」「プライバシー権」。これらは自民党案の中で出てきた甘い飴なのですが、今回の安倍改憲提案は「教育の無償化」です。これは維新の会が重点改憲公約に出したものです。つまり今回の安倍改憲提言は、簡単に言うと、九条改憲については公明党、甘い飴については維新の会、これを出したということが特徴です。今まで自民党が何としてもなくしたい九条の2項を残すという形で出してきたのは、これをやらなければいくら改憲改憲と言っても、改憲発議もできないし、国民投票で勝つこともできないという戦略に基づいて出してきたのです。

 

■安倍改憲をめぐる攻防

 安倍首相が昨年5月に戦争法を通して改憲を提案すると言ったときに、安倍首相の前に立ちはだかっている壁がありました。それは市民と野党の共闘です。
 実は国会の中で憲法審査会を運営していくときに、あるいは国会で発議をするときに、あるいは国民投票に向けてどういう形で提案するかというときに、議会制民主主義の下では、必ず野党第一党との協議の下でやらなければならない。特に改憲手続き法という法律は、発議については与党と野党の第一党が緊密に協議をして改憲案を発議するということを想定しているのです。
 ところがその民主党が戦争法反対の運動の中で、初めて改憲反対になってしまったのです。衆議院の野党第一党は立憲民主党、参議院の野党第一党は国民民主党、両方とも戦争法反対の運動の中で改憲反対になってしまいました。安倍首相にとってはすごくまずい。民主党が敵陣営になって、巻き込むことができないからです。
 もう一つ、市民と野党の共闘が盛り上がった結果、16年の参議院選挙で32の1人区で、戦後初めて野党共闘ができました。そのため11区で自民党は議席を落としています。1人区は自民党の票田でもあったのです。ところが野党共闘で、東北6県のうち秋田県を除く5県で議席を落としてしまった。ですから衆議院選挙で289の小選挙区で同じように野党共闘ができたら、今選挙をやったら3分の2は取れない。
衆参両院の現有の3分の2の議席で突破するしかない。民主党を敵に回した以上は衆参両院で公明党と組むしかない。公明党は九条改憲に対して極めて消極的です。参議院は自民と公明だけでは足りない。維新の会を入れなければ足りない。つまり、今度の改憲提言は最大限に譲歩をして公明党と維新の会とスクラムを組んで強行突破する。特に公明党は、国民投票の時に創価学会の力を使わないと勝てない。自民党だけでは勝てない。創価学会を国民投票運動に動員するには、公明案を丸呑みする必要があったのです。そうまでしてでも安倍首相は改憲を実現したかったのです。

■九条の1項2項を残して3項に自衛隊を書くことの問題

 政府は、九条2項の下で自衛隊は軍隊ではないというために、いろいろな努力をせざるを得ませんでした。これがガンなのですから。ところがこのガンを残したまま自衛隊を明記することのどこが危険なのでしょうか。
 実は今世論調査をやっていて、安倍首相の下での改憲に賛成か反対かを問うと、改憲に反対の人が多いのです。しかし、
①九条の1項と2項は残して自衛隊 を明記する案
②2項を削除して自衛のための軍隊
 を持つ案
③9条は変える必要はない
のどれがいいかを問うと、圧倒的に①②が多いのです。変える必要はないは20%しかいないのです。つまり、今の国民の世論は安倍さんの改憲は恐いけれど、自衛隊を明記するだけならいいのではないかと考えているということです。これを安倍さんは狙っているのです。私たちはこれから、九条はいかに力があるかということと同時に、九条の1項・2項は残して自衛隊を明記する案がいかに危険かを伝えていかないといけないのです。
 安倍案は、具体的には、九条の1項・2項は残して、改正提案2に、「前条の規定は我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛のための措置を妨げない」を書き加えます。
 自衛隊を明記することで、国民の反対を押し切って通した「戦争法」によって海外で戦争ができるようになった自衛隊が、「合憲」だと言われることになります。自衛隊は大手を振って戦争に参加できるわけです。
 日本国憲法には非常事態規定がありません。それは日本国憲法が戦争や軍隊を予定していないからです。
「戦時における国民の自由の制限」などはないのです。ところが、九条の2という形で自衛隊を「軍組織」として明記すると、「軍刑法」を認めることになります。軍人の規律は市民刑法では役に立たないのです。海外で戦争をするときに、軍の厳しい規律がなければ絶対に戦争はできません。なぜなら海外で戦争をするということは、海外の軍隊と戦うわけですが、厳しい戦闘状態に陥ったとき、非常に強い恐怖を持ちます。アメリカの海兵隊でも大量の離脱者が出るのです。それと「撃て!」と言われても撃てない人もたくさん出てきます。戦前の日本軍はアジア最強と言われましたが、大量のそういった人達が出ました。しかしそんなことを許していたら戦争にはなりませんから陸軍刑法、海軍刑法は抗命(命令違反)に対しては最高死刑です。敵前逃亡も最高死刑です。こういう規定は市民の刑法にはありません。公務員だって命令を拒否したら死刑ということはありません。そういう軍特有の厳格な刑法がなければ戦場に兵士たちを縛りつけることはできないのです。それと、日本には軍隊がないので軍事秘密を特段に重く処罰する法律はありません。
 戦前の日本は軍機保護法をはじめとして、大量な軍秘密を守る法律があり、どこの国でも軍事秘密を漏洩すると最高死刑になります。日本にはないのですが、安倍首相が秘密保護法をつくりました。しかし特定秘密保護法であっても、軍事秘密について漏洩した人への罰則は最高で7年です。日本には軍隊がないのですから、軍隊特有の軍事機密に対する罪と同じ処罰をしたら、憲法一四条に違反します。だから、もし九条の2という形で自衛隊を軍組織として明記する規定が入れば、憲法全部が変わります。

 
■国民の9割が支持する自衛隊

 60年間にわたって総理府と内閣府が自衛隊と防衛に関する世論調査をやっていますが、この中で「自衛隊は何に役に立っていますか?」という質問を50年以上しています。そして「自衛隊を何故あなたは支持しますか?」という二つの質問に対して、8割以上が「災害復旧支援」と答えています。国民は「自衛隊は災害復旧支援に頑張ってくれている」と思っています。
 でもこれは自衛隊の実働ではないのです。でも国民はそう思っているのです。それは自衛隊が軍隊になってはならないから、努力をしてそうなっているのですが、憲法で自衛隊が認められれば、そんな無駄な努力をする必要はないわけです。普通の国の軍隊と同じように、災害復旧支援は消防と警察に任せればいいということになります。
 そういう意味で言えば安倍首相が盛んに強調している「自衛隊像」とは確実に変わります。


■3000万署名の成功が鍵!

 安倍政権を退陣に追い込むには、一番いいのは3000万署名を成功させることです。3000万署名を本当にやりきるということは有権者数の過半数を取るということですから、これは国民投票では絶対勝てるということです。
 それ以上に大きいのは、九条の会を7000つくったところで大きく国民世論が変わったように、3000万署名をやることによって国民世論が変われば、間違いなく起こることは公明党が動揺する。それから多くの国会議員が、自民党であろうと何であろうと、地元から選出された国会議員はやはり改憲発議を強行することについては躊躇するだろう。それから、何と言っても3000万を集めれば、「もう改憲は終わった」と考えている立憲民主党や国民民主党も含めて、やっぱりこの問題では国民の負託に応えて頑張らなければ
いけないという話になる。そうなれば強行スケジュールは難しくなると思います。
 参議院選挙を市民と野党共闘で戦って3分の2を阻む。これが一番確実に安倍政権を倒し、改憲を阻む手段になると思います。
 改憲を阻んでも沖縄の問題は解決しません。けれども沖縄の問題を解決するには、まず安倍改憲を阻んで、その力で野党連合政権をつくる。これしか手はないです。ですからそういう意味で言うと、安倍改憲阻止が憲法の生きる日本をつくっていく上でも大きな第一歩になるということを強調していきたいと思います。

質疑より

Q 安倍首相が総裁選で勝って臨時国会に入ったときに強行突破することは?
A おそらくあり得ないでしょう。臨時国会では時間が短すぎます。臨時国会で強行採決してしまうとマスコミが騒ぎ、それだけで国民投票に勝てません。自民党はまず憲法審査会での議論を望んでいます。それを臨時国会に提案し、次の通常国会にかけて、天皇代替わりを無視して国民投票を行うことにするのかどうかはわかりません。
 しかし、立憲民主党や国民民主党が突然改憲派にならない限り、私たちの運動がある限り、強行突破はできないと思います。

Q 自衛隊は認められているのだから、九条に自衛隊を明記して、「個別的自衛権だけとする」と歯止めををかける方法がいいのでは?
A 立憲的改憲論がそれなのですが、個別的自衛権であっても、自衛隊を「自衛のための軍事組織です」と憲法上に書くことで、堂々と憲法上の組織となるわけですから、特権を与えようが、軍刑法をつくろうが自由ということになります。
 米軍と自衛隊の戦争協力をなくす唯一の方法、一番簡単で確実な方法は、「戦争法」を廃止することです。
これをやるには改憲を阻む野党で連合政府をつくって戦争法を廃止する。これによって日本の自衛隊は大きく変わります。「アメリカとの協力はやりません」という形になります。一番いい方法は改憲を阻んで、戦争法を廃止することです。



オスプレイの横田基地配備に反対する集会に参加して            堀口 暁子

                                                                                   

 6月17日東京都福生市の多摩川中央公園で行われた「横田基地へのオスプレイ配備反対集会」に参加しました。東京平和センターと三多摩平和運動センターの主催で、労働組合旗や平和団体の旗が掲げられ、1900人の参加者の中には、若い人や家族連れの姿も目立ちました。集会では、様々な団体の決意表明の後、沖縄平和運動センター議長の山城博治さんが闘いの歌を披露しながら、安倍内閣退陣を力強く訴えました。集会後は横田基地のゲート前やフェンス沿いを含めて3キロの道をデモしました。フェンスの反対側にはアメリカ風の店が並んでいましたが、デモには関心がなさそうな雰囲気でした。 
 CV22オスプレイの飛来・配備は、在日米軍が今年4月3日に「米空軍CV22オスプレイを今夏に横田基地に配備する。訓練のために今週後半に5機が立ち寄る。今後数年で10機、約450人を配備する」と発表し、二日後の5日に5機が飛来しました。このCV22オスプレイは、米空軍の「斬首作戦」など特殊作戦用で、朝鮮有事の際は沖縄の嘉手納基地などの特殊部隊を真っ先に敵陣深くに送り込む役目を担うそうです。
 オスプレイはこれまでに様々な事故を起こしています。米韓合同訓練後に横田基地、岩国基地を経由して嘉手納基地に向かう途中でエンジントラブルを起こし奄美大島に緊急着陸した事故。3800メートル上空からパラグライダーで降下訓練を行った際、失敗してパラシュートの一部が羽村第3中学校に落ちた事件など。オスプレイの事故率は高く、世界で最も危険な航空機が頭上を飛び回る恐ろしい基地になるのは絶対反対、と声を挙げました。
 あきる野市に住む知人は、「横田基地に隣接する5市1町(福生市、立川市、昭島市、 武蔵村山市、羽村市、瑞穂町)ではないけれど、家の窓から横田基地へ着陸態勢に入るオスプレイや基地上を通過する機影が連日のように見える、その音は身体に響く不快なもので、危険と隣り合わせのところで生活しているという不安をいつも感じている。パラシュートの部品が中学校のテニスコートに落ちた時、防衛庁横田事務所に抗議に行ったところ、『500ミリリットルのペットボトルが落ちた程度』とあまりにも軽く見ているのに腹が立った。『上空から落ちたものが人間を直撃したら死んでしまう』と抗議をした。毎月のように抗議集会や座り込みをしている。多くの人に実情を知ってほしい。そして一緒にオスプレイ来るなの運動に参加してほしい」と語ってくれました。
 私の住む八王子市でも、オスプレイは轟音と共に飛来しています。見るたびに「この空は私たちの物だ」とこぶしを挙げています。米軍基地をなくす問題は、沖縄と一緒に全国各地で運動していかなければならないと感じています。                  (女性「九条の会」事務局)
 


■今、教育が危ないー道徳の教科化は子どもの人権問題               宮前 節子

 安倍晋三政権が道徳の教科化を強行に推し進め、2018年は小学校、今年は中学校の検定教科書を各自治体で8月31日までに採択する予定である。
 N区の教育長は「子どもたちの間でいじめが増えているので、今までの道徳の時間をきちんと授業として位置づけることが求められる」と発言した。いじめ問題を道徳の教科化と結びつける安易な考えであれば、さらに問題である。
 兎に角、教科書の展示会場に赴き、日本教科書、光村図書出版、学研教育みらい、廣済堂あかつき、日本文教出版、東京書籍、教育出版、学校図書と、すべてを読むのは相当の時間がかかるため一部を抽出し読み比べてみた。国の定める徳目に合わせて作られた教科書であり、どの出版会社も多少の違いはあるものの教科化のねらいが表面化した内容であると感じた。学習指導要領に合わせて「集団や社会とのかかわり」など徳目を4つに分類し、順番通りに並べているという。子どもたちの興味に関係なく先に結論ありきの教科書。しかも別冊ノートが付いている出版会
社が多く、子どもたちが自己評価する仕組みになっている。中学生には、もっと科学的に観る目を養うための授業に時間を使ってほしいと思うのだが。ともあれ人格形成期に道徳の教科化は、マイナスではないだろうか。
日本教科書の中に“尾高惇忠が目指した富岡製糸場”という文章がある。「国のために役に立ちたい」「国が中心になって大量の生糸を生産し、金を稼がなくてはならない」と強調する。「国のため」という意識を強調して載せている。日本教科書は、新たに参入した教科書出版社で、日本教育再生機構の八木秀次理事長が教科書申請当時の社長である。「日本の戦争は正しかった」と主張する靖国派の団体である。
 また、学研の「国―祖国を愛する王貞治の回想から―日本シリーズなどで国旗が掲揚される時に座ったままの人がいるのは不思議。国に守られて育ってきたという意識があってもいいだろう、祖国という言葉は美しい言葉、などの文章がちりばめられている。この部分の問いに●祖国という言葉にどのような思いを重ねたいか
●日本という国を思うとき、どんなところが好きですか、どんなことを誇りに思いますか
などの設問がある。無理やり答えさせることを通して、自覚を持って国を愛する意識を養おうとしているように見える。
 そもそも道徳とはなんでしょうか。なぜ、教科化に力を入れるのでしょうか。
 金田一春彦編現代新国語辞典によると「社会生活の秩序を存続するために個人が守るべき規範の総体」とあり、解釈の仕方では国家が個人を操ることも可能になる。近現代史専門家の石山久男氏によると、「道徳は、人間が単独で生きることはできないという生活のしかたをつくってきたなかで、他者、さまざまな集団、地域社会、日本社会・世界などとどういう関係をつくっていきていくという生き方・考え方のこと」「自主的、主体的に判断し、生き方を選びとることができるためには、人間をとりまく社会・世界についての事実を広はく知り、事実に基づく科学的知識が必要である」としている。全く同感である。道徳を点数化することに違和感を感じるし、特別な教科として教科化を導入した理由も修身を重んじ、国家の絶対的命令に従う教育を公教育に導入するための教科「道徳」なのであると思う。
 評価については、文部科学省が設けた「道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議」が2016年に提出した通知がある。他の児童生徒との比較による評価ではなく、児童生徒がいかに成長したかを積極的に認め励ます個人内評価として記述式で行うというもので、心の中の変容を教師は一人一人見ることになる。
 私たちは、子どもたちの教育を国家戦略に使ってきた歴史から学ぶことに着目することが必要で、いま、なぜ新学習指導要領体制で教育統制が強められるのか。学校だけでなく地域や家庭に求めてきていることをもっと意識しなければ、歴史の過ちを再現してしまうのではないだろうか。
                                                        (女性「九条の会」世話人)

 

ページトップへ