女性「9条の会」ニュース12号 2009年4月号

女性「九条の会」4周年記念集会特集              

一面

 

参加者 900名 
当日アンケートに答えてくださった方 208人
年齢 10代:3人・30代:3人・40代:10人・50代:20人・60代:108人・70代以上:55人・不明:9人女性九条の賛同者:56人 賛同者以外:144人 不明:8人 お住まい 東京:59人・神奈川:30人・埼玉:20人・千葉:8人・その他:9人(山梨・群馬・岐阜・北海道・県名不明)

 司会は大原穣子さん。開幕と同時に江戸伝統芸能のカッポレがはじまり、明るく楽しい雰囲気に包まれた。
 開会で、江尻美穂子さんは「北朝鮮のテポドンの発射などを聞いて、やはり軍備がなくては危ないのではないかと思われる方もおられるようだが、私たちは、憲法九条、特に軍隊を持たないと宣言している第2項をしっかり守って、本当の平和を求めていきたい。」と挨拶。
 講演をされた日野原先生は、97歳という高齢にかかわらず終始立ち通しで、会場に語りかけるようにお話をされ、感動を呼んだ(内容は2,3ページに掲載しています)。
 吉永小百合さんの「世界中が憲法九条を持てば、地球上に戦争は起こらない。平和を願い、平和を築く勇気を持ち続けよう。」という励ましのメッセージで第2部がはじまり、呼びかけ人挨拶では、吉武輝子さんが、国の雇用制度と後期高齢者医療制度の問題をあげて「高齢者は見事にキレるという瞬間を持つ必要があると思う。みんなでキレましょう」と熱く呼びかけ、大学生を募集してカンボジアで学校づくりをしておられる小山内美江子さんは、「ヨルダンやイランの若者は『日本はすごい。
憲法九条があって、軍備にお金を使わないから経済大国になった』と羨ましがる。日本にはそれだけのものがあるのだということに、日本の若者は気づいていない。私は今、労働を共にしながら若い世代に憲法の大切さを押し込んでいる。」と頼もしい発言をされた。
 在日2世の崔さんは、ショパンやシューマンの美しい音色を聴かせてくださりながら、死ぬまで祖国に戻れなかったポーランド人であるショパンの苦悩と怒りを知ることで、差別を受けながら日本で暮らすことを余儀なくされた父親の怒りと悲しみが理解できたと語った。そして「今日のように平和を求める人々の集会で平和を語るのは簡単だが、一旦ホールを出ると、『君が代を強制しないで!』などと声を出せば、大変冷たい反応が返ってくる。それは危険なことでもある。けれども、それでも平和を語るとことを恐れない強さを、今日もう一度確認したい。」と私たちに決意を促すかのように話された。ピアノ演奏が終わると、日野原先生は壇上より舞台の盛り花から数本を抜き取って崔さんに捧げ、熱演をたたえて軽く抱きしめた。会場は湧き、拍手に包まれた。
 最後に「平和運動一筋に生きた市川房枝さんが亡くなって28年、私たちの力で、1人も戦場に出すこともなく、1人も殺すこともなく30年近くを送ってきた。私たちがまた平和への思いを子どもたちに残して行けば、そしてまた子どもたちから子どもたちへ平和への思いをつないで行けば、平和で世界の模範になれる可能性があることを皆さんと一緒に信じたい。」という本尾良さんの閉会の言葉で集会を終えた。
※当日は多くの方々からカンパをたくさんいただきまして、ありがとうございました。事務局一同ほっと一息ついているところです。

2〜3面

命と平和を次の世代につなげるために
日野原 重明さんの講演会から

 

65歳は老人ではない
 50年前につくられた「65歳を老人」とする国連の定義は、変えなくてはいけません。私は、老人の定義を10歳底上げするために、来年の9月には国連に行こうと思っています。8年前につくった「新老人の会」は、老人を新しく定義しようという会で、75歳以上がシニア会員、60歳以上をジュニア会員、20歳以上の人はサポーター会員として入会してもらっています。会員は8千人。
間もなく一万人になり、来年は3万になるだろうと思っています。

ピアノと私
 今日は在日韓国の崔さんがショパンを弾いてくれます。私はショパンが大好きです。10歳の時からピアノを習っていました。アメリカ人に習ったのですが、腎臓炎になって運動を一年間止められたので、気の毒に思った母が習わせてくれました。ショパンのワルツとかポロネーズなどを引けるようになっていましたが、その先生は3年で国に帰られ、私は独学で練習しました。京都大学の医学部に入って2年になるときに、今度は結核になって1年間療養しました。化学療法のないときでしたから、ただじーっと寝ていて、ビクターの手巻きの蓄音機で妹がレコードを聞かせてくれるのを、五線譜に写していました。そのころやっとドビュッシーやフォーレの音楽が日本に輸入されるようになりましたが、楽譜はなく、楽器店にドビュッシーの「月の光」の楽譜を頼んだら、マルセーユから船で横浜にきて、それから京都の楽器店に来るまでに3ヶ月かかりました。こうして手に入れた楽譜を工夫しながら練習しました。欲しい楽譜は3ヶ月も待たなければならなかったので、来たときの感激は大変なものでした。物の豊かな今の日本の子どもは感激がなくなって、何でも当たり前になっていますね。これは非常に恐ろしいことです。

10歳の子どもの感性
 『10歳の君へ』という本を2年半前に書きました。それを読んだ10歳の女の子が私に手紙でこう書いてきました。「年を取った人は大きな樫の木の大木のように大きく茂っている。先生の本を読んで私はそう感じました。寿命という大樹の空間の中に、私の瞬間瞬間をどう入れて行動するかが私の仕事で、難しい仕事です」と。
 私は慶応大学で講演して、その10歳の子どもの話を紹介しました。講演後の感想文には「私は大学に入るまでに命というものを全然考えずに、どうすればいい学校に入れるかということを一筋に考えてきました。10歳の子の手紙を知って涙が出ました。私は10歳の子どもに劣るんだと思いました。」こんな感想が20通もありました。今
の10歳の子どもの手紙は大学の卒論以上のものがあるわけですが、それが10歳でわかるんですよ。ですから日本が今後どういう方向に行こうかということは18歳にならなくても分かるんです。

「新老人の会」の3つの生き方
 一つは他人を思いやる大きな愛、二つ目はリーゼン・フーバーの言う「人は始めることさえ忘れなければいつまでも若い」。チャレンジする心です
ね。私のモデルは新老人の会の樋口先生です。この方は90歳の時に中国語を勉強して中国の大学で講義をし、100歳でロシア語を勉強してロシアやその他の国に行って自分の障害児のための施設でやっている訓練の話をし、102歳の今は「ブラジル100周年の移民の会」のために、ポルトガル語を勉強しておられる。こういう人もいるのです。
もうひとつは、平和に向かって生きること。安倍元総理は「国民投票で国民の過半数が投票すれば憲法9条を変えることができる。自衛隊を自衛軍にして、軍隊を持つ国に変えることができる」と明言しています。保守党はイエスと言うでしょう。しかし政党はそれを支持しても、国民が支持しなければ憲法は変えられない。変えさせないためには選挙権を持っている人の半数以上が反対しなければならないのです。そのために私は、18歳の若者にも選挙権を与える運動を展開して、若者を含めてNO!という発言をする運動をしているのです。

麻生さんへの提言「オバマの勇気を学ぼう」
 オバマ大統領が最初にやったことは、ブッシュの間違った政策で起きている戦争をやめて、アメリカは戦線から兵隊を引き揚げる。同時に核兵器を持っている国々に申し合わせて、核兵器を少なくする方向にイニシャティブを取ろうと明言している。彼が戦線から兵隊を引き揚げようといった勇気に私は賛成する。私は、麻生総理から話を聞きたいと声がかかった折りに、「オバマ大統領が仕返しをする戦争を止めたことを私たちも学んで、日本の兵隊をアメリカや英国の兵隊と一緒に任務に付かせることは止めなさい。沖縄その他の基地を縮小して、10年後には帰ってもらう。
15年先には航空母艦も日本の近海には寄らないようにしてください。このようなオバマさんの目標を早く達成するためにあなたは勇気ある行動をしてください。」と直言しました。アメリカと一緒に戦っているから北朝鮮は日本をマークするのです。だから日本が裸になって、武器を持たない、戦争はしないと憲法で言っているようにすれば、日本を攻撃する理由は絶対にないのです。もし攻撃をしたら国連は黙っていません。
 武器を買うための国家の予算を、介護のため、福祉のため、教育のため、医療のために使えば、日本の予算でちゃんと賄えるのですから。
 自衛隊は戦争に関与するためではなく、日本での災害や、外国での災害時にはすぐその日のうちに出動して、人々を助けに行くようにするべきです。また、就職をしたら1、2年間はその会社に待ってもらい、難民のところに行って、難民の生活をしながら畑を耕したり、井戸を掘ったり、小学校で教えたり、いろんなことをやってから会社に戻るといいと思います。徴兵をしない代わりに、そういうことをするのです。そうすれば、そういう日本に対して他国が核兵器で攻撃をするなどということはあり得ないではないですか。

 

命と時と平和
 10歳の子どもに、みなさんのお子さんやお孫さんにぜひ読んであげてほしい本があります。
「命は見えない、触れない、酸素や空気や風が触れないように、見えないように、命も見えない。でも命は使うことができる。ということは君たちの持っている時間を使うことができる」という命と時間を一緒にした本を書きました。去年NHK出版から出した「今伝えたい大切なこと」。副題は「命と時と平和」です。
 最後にカントの「永遠の平和のために」の一節から。「平和というものは全ての敵意が終わった状態をいうのだ。」“敵意がない状態を”です。敵意がある間は平和ではないのです。「戦争状態とは武力によって正義を主張するという悲しむべきことをいう。」ブッシュが現れる前に言った言葉です。正義のためというのはみんな嘘です。「常備軍は一切を廃止するべきである。」200年以上も前に、カントはこの激しい言葉を述べています。カントのように平和を守るためには軍備はいらない。真っ裸になるんだという運動を拡大していきましょう。

 

4面

感想から

・オープニングの獅子舞、こんな品のいい舞は初めて見ました。日野原先生といい、吉武さん、小山内さん、なんと力強く生きておられることかと圧倒されました。ピアノ演奏のときの話、ポーランド、ショパンの話、はじめて聞きました。

・4年前から参加しておりますが、発展してきていることがうれしいです。日野原先生のお茶目な態度とお話は、これからの人生がますます明るく感じられます。平和を守りぬきましょう。

・ひと目日野原先生に会いたくて岐阜からやってきました。とても素晴らしい会でした。ショパンの曲、詩的な語りも。岐阜にも女性の9条の会を出発させたいと思いました。

・日本に素敵な女性たちがいることを知りました。日野原先生のお話をはじめて聴かせていただきました。今、生かされ、この場にいられたことを深く感謝します。皆様スタッフの方々一人一人のあたたかさ、明るさをいただき安心して聞かせてもらいました。私もみなさんの仲間に入れてほしいです。

・横須賀には米軍の原子力空母ジョージワシントンが配備されました。今日のお話のように早く米軍基地がなくなり安心安全な町になることを思っています。平和な街になるよう60歳の私も多くの市民と頑張っています。今日は大切なお話が聞けて良かったです。

・日野原先生、吉武輝子さん、小山内美江子さんそれぞれの表現での平和への思いが響きました。チェ・ソンエさんの演奏,特に「アイ・ガット・リズム」が素晴らしい。希望を感じました。

・日野原重明先生の10歳のお子様の命の哲学の手紙に感動しました。幼いときほどくりかえし繰返し、口伝えする事で1人ひとりの心に響くのだと思います。私たちも身近な子どもたちから伝えて 行こうと思います。

・すばらしい会でした。私は東京大空襲で父が行方不明となりました。12歳から1歳まで、5人の子どもを育てた母のことを思い、死ななければならなかった父の思いを大切に、平和のために、ささ やかな力を自然体で続けます。

・日野原重明先生のお話で、否定より肯定で、禁止より平和を求めるといったような視点の転換をすることで九条を守っていく、世界に広めていくことを、自ら署名を集めるなどで行動を起こしていきたいと思います。

・命とは“その時間を活きろ”ととらえました。お陰で年をとることに向き合えます。素晴らしい講演でした。核兵器廃絶の運動、いかなる国の戦争にも反対していく運動は、やがて多数派となることを信じて活動していきたいと思います。

・日野原先生のお話の中で、特に日本は「はだかになれ、米軍基地をなくし、米軍艦隊の入港を禁止するようにせよ!という言葉に感動しました。できれば、「はだかになれ」と言う言葉の背後に、その結果として受けるかもしれない犠牲は、世界の平和のために甘んじて受けよ、という意味が込められていることを、もっともっとはっきり言ってもらいたいと思います。

※当日会場でお願いした「核兵器廃絶」の署名は、約600筆集まりました。ご協力ありがとうございました。