女性「9条の会」ニュース9号 2008年7月号

理想に生きられるのは人間だけ    湯川れい子さんの挨拶から

  私は父と一番上の兄を戦争で亡くしました。そのため戦争前と、戦争、戦後とではもうめちゃくちゃ生活が変わりました。もう一つの体験は、戦争というのは始まったらあっという間にとんでもないことになってしまうということ。そして、名も無い、力もない年寄りや、女や、お腹の大きい女の人や、生まれたばかりの赤ちゃんや、そういう人たちが悲惨な目に遭うんだということを身にしみて体験しました。
 戦後61年、少なくとも朝鮮戦争にもベトナム戦争にも、日本がまったく関わらないで済んできたのは、九条があったからです。
 でも、いつも何か、仮想の敵とか仮想の恐怖、例えばテポドンが来たとか、中国がこわいとかいろんなことが言われています。でもそこで私たちが憲法九条を捨てて武装をしたらどうなるでしょう。私たちの国以上に周りの国は、それに脅威を感じるでしょう。なにしろ、あの第二次世界大戦という後遺症を引きずっているわけですから。そこで日本がもう一回帝国主義に、ということになったら、どういう反応が起きるでしょう。これはいつでも先制攻撃の機会を与えるということですね。これは想像力の問題です。

九条を捨てさせようとしているのは誰?
  この間、ハリケーン・カトリーナがニューオリンズを襲いました。アメリカでジャズの元になるものを生み出したのは、アフリカから拉致されて連れてこられた人たちです。あれは拉致です。壮大な拉致です。未だにほっぽらかされて、医者にもかかれない人たちが、この間のハリケーンの犠牲になりました。そこにお金を届けに行って、また悲惨なものを見ました。アメリカは今本当にお金がないのです。そして、決して“デモクラシーの自由な国”ではないということを、嫌というほど目の前で見てきました。 そしてそのアメリカが今、日本にいろいろなプレッシャーをかけて、九条を捨てさせようとしているのです。

巨大な戦争ビジネス
   この間、バクダットで、白血病で入院している子どもたちに、勉強を教えているイブライム先生が、私の小さなセミナーにいらしてくださいました。 
 毎日50人、100人の人が首を切られたり、無残に焼き殺されたりする死骸が流れ着いてくる。子どもたちの病院にも容赦なくテロの銃撃が仕掛けられている。その中で、水を確保したり、お薬を確保したり、イブライム先生は頑張っています。イラクの方です。「毎日あなた達の仲間が首を切ったり殺したりしているのは同じイラクの人でしょ。」と聞いたら「違います」とおっしゃる。「イラク人だけどイラク人ではありません」とっても苦しい言葉が返ってきました。同じ民族が殺し合う、そういう国になってしまっている背後にあるのは、巨大な国のビジネスです。もうそういうところに巻き込まれてしまったらお終いだということをイブライム先生の苦しい表情や現実を聞きながら、再認識しました。

 全ての動物のなかで理想に生きられるのは人間だけです。私は人間として生きたい。
そして人間として死にたい。それだけの恩恵を私たちは父や母達から貰いました。
そしてその恩恵を残して死んでいきたいと思います。その恩恵の私にとってもっとも輝かしいもの、それが憲法九条です。

 

女性「九条の会」憲法セミナー 報告

変化する世界のなかで、
「軍備のない日本を」は、理想に過ぎないのか?
講演 渡辺治さん

講演内容は冊子になっています。ご希望の方は事務局にご連絡ください

 6月30日、東京仕事センターに於いて、女性「9条の会」憲法セミナーが開かれました。はじめての夜間学習会とあって、参加が心配されましたが、123名の方が足を運んでくださいました。
 司会は呼びかけ人の大原穣子さん。呼びかけ人の一人で、ジャズ評論家としても活躍され、今年は幕張メッセでの世界9条の会で、中心的な役割を果たされた湯川れい子さんの挨拶(1ページ目をお読みください)で幕を開け、続いてシンガーソングライターのきたがわてつさんが「日本国憲法前文」などを熱唱。
 続いて、一ツ橋大学大学院教授の渡辺治さんが90分にわたって講演されました。多くの方の感想にも、難しい内容を分かりやすく、面白くお話してくださったので、90分間、ずっと引き込まれ続けた様子が書かれていますが、分かりやすく、
しかも勇気づけられる講演でした。
 講演内容は、紙面では限りがありますので、今回は簡単な冊子にして同封いたします。ぜひお読みください。

 

きたがわてつさんの歌から…
  わたしを褒めてください
              作詞  ジェームズ三木
             作曲  きたがわてつ
この世に生まれて60年 わき目も振らずに働きました
あれから日本は戦争を いちども起こしておりません
あれから日本は外国人を ひとりも殺しておりません
なんて素敵な国際貢献 どうかわたしを褒めてください
この世に生まれて60年 わたしはまだ役に立ちます
100年わたしが生きたなら 世界はきっと気づくでしょう
日本の憲法9条が みんなの夢であることを
どうかわたしを守ってください お払い箱にしないでください
空から爆弾落としますか それとも愛を信じますか
決断するのは日本国民 主権を持つあなたです
どうかわたしを守ってください お払い箱にしないでください
なんて素敵な国際貢献 どうかわたしを褒めてください  

 

 参加者の感想から     

 ★湯川さんのお話のなかで、「理想を生きてこそ人間」この言葉に感銘を受け、この言葉にこそ誇りを感じ、素晴らしいと思いました。
 きたがわてつさんの歌も9条や前文の唄は記憶(暗譜)してしまったくらいのファンなので、涙ものでした♪
 私の地元の9条でもこんな素適なイベントを開けたら良いのですが、予算がないので、このイベントがうらやましいです。
 渡辺先生のお話は、これで3度目ですが、何度聴いてもよかったです。元気を頂きました。先生の最後のことば、「憲法は生まれながらに殺さ れかけ、命からがら生きてきた」というエピソードを語 ってくださり,とてもそこが印象的でした。

 ★すべて、とても充実した内容で、私たちが明日から何をすればよいのかよくわかる集会でした。ありがとうございました。私も私のかかわっ ている場所で力をつくして仲間を更に増やしたいと願っています。

 ★非常に充実した内容でした。湯川氏、きたがわ氏、渡辺氏、それぞれのアピールが響きあって、未来への展望を具体的に提示して下さいまし た。  
 きたがわてつさんの歌、「私をほめてください」がとてもよかった。
 渡辺治さんのお話はいつも素晴らしい。何度きいても新しいことが入っていて、退屈しない。日本母親大会での講演が楽しみです。
   良心的保守層にも働きかけて、「9条を変えたら大変よ」と広く広く
「9条守ろう」の輪をつくっていくことが大切だとわかりました。

 ★湯川れい子さんの(平和)9条のお話は今まで聴いたなかで最高に感動しました。体全体からあふれ出る、頭だけでなく、細胞のすべて、肉 のすべて、骨のすべてを動員して生まれ出た言葉のように思いました。だから、私も体のすみずみまで感動で満ちあふれました。 きたがわて つさんの歌は、期待どおりでしたが、とくに「私をほめてください」がすばらしかったです。 渡辺先生のお話は憲法と政治の歴史がわかりや すく、面白く、おかしくゲラゲラ笑いながら、聞かせていただきました。そして、私たちが考えるべき要点をしっかり教えていただきました。
 今日の憲法セミナーは、今まで出席した中で最もすばらしく楽しく印象に残りました。

 ★非常に良い講演だった。きめ細かで説得力があったし、判りやすかった! 国民の力で、これだけ守り続けてきたんだなあと、自分たちの力 を再認識できた。「どうしても負けられない。くじけそうになっても“仲間がいるんだ”と思い、疑念を持たず、絶対に実現するんだという気持 をもって…。」最後の挨拶のとおり、胸に強く刻む言葉になりました。

 ★すばらしい会でした。講師の選定がとてもよかった。
 難しい話なのに、楽しく、よくわかりました。うばすて山の高齢者だが、憲法九条を守ることに全力をあげたい。戦争を語りつぐことをぜひ会 でとりあげて欲しい。

 ★大変よいお話で頭が冴えました。いつもは疲れるのですが今日は元気。九条を知っているつもりでも、戦後政治との関係が実にはっきり明快 でした。
 元気の出るお話、友人を沢山つくればいいと思いました。今日のようなお話を沢山宣伝してやりましょう。
 20代から活動してきて、家事・育児・仕事の手を抜きましたという人生だったのですが、今の反動的状況下、後ろ向きになるところでしたが お話を聞いて、活動人生を肯定的に振り返ることができて、幸せでした。子どもたちにそのことを伝えます。 79歳 橋本宏子

 ★渡辺先生の呼びかけに尽きると思います。
 私は、3つの「9条の会」に関わっていますし、その他の生活・文化・たたかいの中で、その精神を生かすようにしています。どうしても負け られないたたかいを日常的に果たそうと思います。
 

 

トピック

2008.4.23 自民・公明・民主3党の超党派議員による「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会
      (約110人)」が活動再開。恒久法独自案をめざす。
2008.5.21 宇宙基本法成立。防衛や産業目的に宇宙の利用を拡大。
2008.6. 4 最高裁大法廷、国籍法3条(父母の結婚がなければ日本国籍は取得できない)は憲法違反、無
効の判断。
2008.6. 4 政府は、スーダン南部のPKO司令部要員として自衛官数人の派遣を決定。
2008.7.10 6カ国協議開催。焦点は北朝鮮の核計画申告に対する検証の方法
2008.7.14 文部科学省、中学校「学習指導要領解説書」に「竹島」明記。韓国は反発。
2008.7.14 内閣支持率24%(朝日新聞世論調査)、不支持率58%。