女性「9条の会」ニュース7号 2007年12月号

迎撃ミサイルはいらない!  

 航空自衛隊の地上配備型迎撃ミサイルPAC3の発射装置を装備した特殊車輌が一一月二九日、習志野分屯基地(千葉県船橋市)に配備されました。三月の入間基地(埼玉県狭山市)に続く配備です。その後も各地の高射部隊に順次配備されることになっています。これは弾道ミサイル防衛(BMD)システムといい、相手国から発射された弾道ミサイルを、洋上のイージス艦に搭載した海上配備型迎撃ミサイルSM3で迎撃、逃れた弾頭をPAC3で撃ち落とすシステムです。しかし、政府は、「これが必要か?」と国民に問うたことはあったでしょうか?
 財政が破綻状態にあり、多くの貧困層が生まれている中、2005年度の防衛関係費は4兆8563億円でした。日本は憲法九条の下にあっても、このような莫大な防衛費を使い続けているのです。しかも防衛という国家機密の
ベールに隠されたおいしい予算です。防衛省で起きた収賄事件は氷山の一角に過ぎず、武器の売買には日米の利権が幾重にも絡んでいるのではないでしょうか。
一握りの人々の利権によって国民が戦争に巻き込まれるのはまっぴらです。

 

「九条の会」全国交流集会報告

 「九条の会」の第2回の全国交流集会が24日東京・千代田区の日本教育会館で開かれました。北海道から沖縄まで全都道府県から1020人が参加。全体会は通路まで人があふれ、熱気にみちた1日でした。集会運営に、女性「九条の会」は準備段階から積極的に加わり、受付や、分科会の司会、記録に人を出し、できる限りの事をしました。
 全体会では、呼びかけ人から大江健三郎、奥平康弘、加藤周一、澤地久枝、鶴見俊輔さんが挨拶。澤地さんから「小さな人間がかわらなければ世の中かわらない。しっかりしいや」という今年亡くなった小田実さんの言葉が紹介されました。沖縄の集団自決を書いたことで訴えられている大江さんは、相手の弁護士が曾野綾子の「国に殉じるという美しい心で死んでいった人々を陥れる…」という言葉を引用して攻撃したことに対して、憲法13条をひきながら、「美しい心などという恥さらしな言葉」を言う者の口をひねり上げてやりたいと語り、会場から大きな拍手が起こりました。続いて5つの会から、「九条の碑を建てた」「日本の青空で2700人集めた」「ニュースを新聞に折り込んで各戸配布している」などの元気のいい活動の報告がありましたが、なかでも1人で8000人の署名を集めたという小金井市の“9条おじさん”箕輪喜作さんの報告に感歎の声が上がりました。
 午後は11の分散会と1分科会(青年)に分かれ、活動を交流し、その模様を全体会で報告しました。女性「九条の会」の参加者もいくつかの分散会に分かれて参加、活動を報告しました。各分散会とも20団体以上が報告、紙面の関係で詳しい報告はできませんが、講演会、学習会、映画会(「日本の青空」が多い)、コンサ-ト等の活動が多いようでした。青年分科会にも35人が参加。政治的なことは嫌いという若者が多い中、「改憲派・護憲派対決シンポ」をやったら結構集まったそうです。締めくくりに、「九条の会」は「改憲反対、9条を生かそうの圧倒的世論をつくろう」との訴えを出しました。集会の詳しい様子は「九条の会」から、報告書が出ますのでぜひお読みください。 
 

全体会での報告 

               第3分散会を担当して          志田 なや子

 第3分散会は、質問も含めて20人の方に発言をしていただきました。そのすべてをご紹介することはできませんので運動を広げるために工夫し、得意技を生かしたという経験をいくつかご報告したいと思います。
 「映画人九条の会」からは、憲法についての映画を作って普及するということで、『日本の青空』の例が出されました。これからもいくつかの映画が作られるようです。「宗教者九条の和」では、共同の輪を広げるということで、創価学会の方も呼びかけ人に加わって、共同の輪を広げようとしているという発言がありました。栃木県の方からは憲法について紙芝居を使って訴えているということです。札幌市の「年輪九条の会」、年輪ですから年齢層の高い方の会ですが、若者に戦争経験を語るということで、映画やビデオ、また、スライドを利用してこういう取り組みを進めているということです。「大阪宗教者九条」の会は、若い人向けに、やっぱり語るだけではちょっと難しいので、スライド、映画、パワーポイントを使って若い人たちに見てもらっているということです。80歳の方がパワーポイントをつかうなどの工夫をなさっているのです。
 各会で手作りのポスターを作っていて、ここでお見せできないのが残念ですけれども、非常に綺麗な手作りのポスターです。
 それから、若い人向けにインターネットのブログをやっています。お金の面でも、「9条寿司」を作ってお祭りに売っているという報告がありました。このほか、手作りの絵葉書、それから、「ワンコインカンパ」で沢山集めているということが訴えられました。
 そんなことで、本当に創意あふれる取り組みがなされているということを感じました。

 

「女たちの全国交流集会」参加者の報告から

 16時30分に集会は終了しましたが、そのあと、女性参加者たち(女性9条の会の賛同者もそうでない方も)が集まり女性の思いを語り合い、経験を交流しました。参加者は25人。2時間足らずの時間でしたが、大原穣子さんの司会で、それぞれの地域で頑張っている状況を話し合い、中身の濃い会でした。

★9条を守る青森市女性の会  9人の女性が呼びかけたが、たちまち200人の会に。月2回、雨の日も雪 の日もデパートの前で平和への思いを対話しながら署名活動をしている。着物姿でしていることもある。

★都立高校女性教職員の会  退職者が主になっている。東京では日の丸、君が代問題で400人以上が 処分されているが、裁判応援、遅ればせながら教育基本法改悪反対署名、街頭で語りかけながら署名を取って いる。会員182名。学習会には4〜50名が参加。教え子に広げたいと思っている。
  
★神奈川女性9条の会  大原穣子さんの呼びかけでつくった。賛同署名300人。横浜、藤沢で街頭宣伝。 来年2月14日、池辺晋一郎さんを呼んでバレンタインナイトを開く。今まで女性団体と無関係にやっていたが、 10団体ぐらいに要請に行った。
 
★兵庫女性の会  去年この会に出席した時には、まだ何もできていませんというだけだった。今年はいい
 カッコしたいが難しい。2年で会員が800人になったが、兵庫も広いし、集会を開くのはむずかしい。でも一人 ひとりに思いを書いてもらったら、「思いを伝える場があってうれしい」とファックスした方も。「私は後世に戦争 に反対したという証明書がほしい」と書いた方もあった。

★高知女性9条の会  つくって2年目。知覧、靖国、大久野島の視察の旅をし、1000人以上のアピ-ルの ポスタ-つくり、8・15には手作り集会を行い、戦時体験、加害を伝えた。元青年学校の教師の方が、「生徒に、 自分はどうしても死ななければならないのかと言われ、答えられなかった」と語り、みな粛然とした。

   
 ★女性9条の会ひろしま  昨年の集会をチラシで宣伝し、決意を表明。賛同者500人となった。9のつく 日に街頭署名、チラシ配布。賛同金5000円、バザ-、小物作りなどで財政をまかなっている。

★宮城女性9条の会  3人で呼びかけをしたら、あっという間に人が集まった。呼びかけてくれてありがとう という人もいた。吉武輝子さんを招き集会をした。こういう場に来て名を連ねたことを誇りに思う。

★9条を守る保土ケ谷女性の会  昨年4月に8回。戦争を語る会が煮詰まって、3ヶ月に1回学習と宣伝 を繰り返し、9条があるのに軍事費があることに素朴な疑問をもち勉強。ベアテさんの講演会もした。やはり女 が目を開かなくてはダメ。九条と24条の大切さを痛感している。

★足立区の江北9条の会  居酒屋で全国のバッジを並べて売り、署名に歩いている。憲法などむずかしくて 分からない人が多く、「間に合っています」などと断られ、ショック。1日20人とれたらいい方で5人の日も。状 況は厳しい。憲法というとわかんないと言う人に「戦争はいやですね」と語りかけ話し合う。集まりのいいのはバザ-。いつも頭を痛めながらやっている。

個人参加の方からも、「保守的な地盤で困っているが、いつか女性9条の会をつくりたい」、「業者婦人の
地位は低い。戦争があってはやっていけない」などの訴えなどが出されました。

 

読んで見ませんか?  憲法九条の大切さを多くの人に伝えるために

茶色の朝   フランク パヴロフ作 藤本一勇訳 高橋哲哉メッセージ (大月書店)

 「ペット特別措置法」ができ、茶色でない猫が処分された。「俺」は驚き胸を痛めたが、仕方がないと思った。「ペット特別措置法」を批判した新聞が廃刊になり、「茶色新報」を読むしかなくなった時も、「しかたがない」とあきらめてしまった。いつの間にか「俺は」茶色の規則を守っていれば安心だと思うようになっていた。
 しかし、ある日、以前茶色でない猫や犬を飼っていたという理由で友人が逮捕された。「俺」は一晩中眠れなかった。茶色党の奴らが「ペット特別措置法」を出してきた時から警戒するべきだったんだ。でも遅すぎた。朝が来て、誰かがドアを乱暴に叩いている。外は茶色。というお話です。
 1980年、保守派の中に極右の政治家ルペンと手を組む動きが出てきた時に、パヴロフが抗議の意味を込めて出版したのがこの「茶色の朝」です。2002年、大統領選でルペンとシラクが一騎打ちになった時、フランスの人々はこの本を読み、「極右にノンを!」の声を上げたのでした。

 

「ねじ曲げられた桜と軍国主義」   大貫恵美子著

 著者はウイスコンシン大学教授、アメリカ学士院会員の文化人類学者である。日本語でも何冊かの著書があるが、注を含めれば600ページにも及ぶこの著では、膨大な文献と資料に基づく豊富な文化人類学の知識を駆使し、日本の国花「桜」の持つイメージを分析し、その5分の4ページをを用いて、明治維新以来、富国強兵を国是とした我が国が軍国主義化していくなかで、いかに桜のイメージがねじ曲げられていったか詳述する。中でも特攻隊員たちの手記から、彼らが死をいかに受け入れていくかの記述を読むと、二度と戦争をしてはならないと強く感じさせられる。                                   岩波書店、2003 


映画紹介

映画「ヒトラー最後の12日間」

 ヒトラーの女性秘書の回想として、ベルリン市街戦をドキュメンタリー・タッチで描いた秀作。ヒトラーが最後にこもった地下壕と対比して、血で血を洗うソ連軍との凄絶な市街戦がたたかわれる地上が映し出される。地下は退廃と狂気の極致。師団がつぎつぎと壊滅している現実を受け入れることを拒否し、軍人の無能をののしる神経症男ヒトラー。なぜドイツ人はこんな男に熱狂したのか。非ナチ社会では生きられないと、天使のようにけがれなく愛らしい幼い6人のわが子を毒殺するゲッペルス夫人の狂気。
 映画の最後は、ヒトラーの女性秘書の言葉で終わる。戦争が終わったとき、自分は知らなかったのだから責任はないと考えていた。しかし、ナチスに抵抗して死刑になったショル兄妹のことを知って、自分も目を見開いていたならば違っていただろうと考えるようになった、と。ヒトラーをなぜ阻止できなかったのか。今、日本に生きる私たちに重い問いかけをなげかける。