女性「9条の会」ニュース4号 2006年 3 月号

 お知らせ   
憲法改定を問うシンポジウムと山内敏弘さんの講演をまとめたブックレット 
「ほんとうはこわい憲法「改正」ができあがりました。

 

 ・シンポジウム・憲法改定を問う      
         第1回 9条・24条   赤松 良子さん  大脇 雅子さん  吉武 輝子さん   
                      第2回 9条・25条     暉峻淑子さん   羽田澄子さん   江尻美穂子さん
                      第3回 9条・27条    浅倉むつ子さん 柴山恵美子さん 中島通子さん
  ・学習会        自民党「新憲法草案」の背景とねらい   講師 山内敏弘さん

推薦の言葉  平和学習のテキストに最適
2004年6月前半にできた「九条の会」に呼応して、女性「九条の会」の発足を見、記念事業として三回のシンポジウムと憲法学集会を開催、その収録がこの美しいブックレットになりました。
 第1回は24条「個人の尊厳と平等」、第2回は25条「生存権と軍事費」、第3回は27条「労働の権利その他」と、いづれも九条を踏まえての内容で、シンポポジストの方々も素晴らしく、遠い地域やご都合で参加できなかった人たちにとっても、平和学習のテキストとして最適だと存じます。
 ぜひご一読ください。            NPO東京地域婦人団体協議会  川島 霞子

 

国会の動きについて      ─注目された三法案─

  去る六月一八日に閉会した第一六四国会では憲法「改正」への道をひらく「共謀罪(条約刑法)」、「教育基本法改正案」、憲法「改正」の具体的手続きを定める「国民投票法案」が上程され、それぞれ審議にはいりましたが合意にいたらず、継続審議となっています。
 昨年の特別国会でも継続審議となった共謀罪は、実行行為はなくても犯罪を計画した段階で、相談の場にいただけで発言しなくても罪になるという、証拠を密告や盗聴にたより、ひいては冤罪にもなりやすい法律です。四月末から五月にかけて今日こそは採決か?という緊張のときを経て、六月二日には民主党修正案を丸飲みとまで報じられながら結局は採決を見送りました。
 教育基本法改正案は五月も下旬になって衆議院に提出され、五〇時間を費やして審議されました。そもそもなぜ今改正なのか、憲法に対すると同じく「世の中は変わったのに教育基本法は変わっていない」ことがまずあって、学力の低下やいじめ、少年犯罪の原因が教育基本法にあるかのようにいい、だから公共の精神、国を愛する態度(民主案では心)をうたわなければならないという説得に欠ける趣旨が議論を収束させなかったのかもしれません。しかし与党案と民主党案に根本的な相違はないのですから、今後どのように調整がはかられるのか、見守らなくてはなりません。
 国民投票法案もまた会期末の五月下旬に審議をはじめました。「①与党案が対象を憲法改正に限るのにたいして、民主党案は国政における重要な問題にかかわる案件をもふくめ、②投票権者を前者は満二〇才以上、後者は満一八才以上(国会議決により満一六才以上も)③過半数の定義を与党案は有効投票総数の、民主案では投票総数の二分の一とする。」その他の相違点はあるものの改憲への方向は一致しているのですから、次期国会でどのように修正協議がなされるのか目が離せないところです。
 日本国憲法の「改正」を望まない者にとって、上記3法案は不要なものです。秋の国会までに、もっともっと仲間をふやし廃案にもちこめるような盛り上がりをつくりましょう。

 

お知らせ

女性「九条の会」リレートーク

4月8日  新宿西口広場で「命と平和を守ろう」と3時間のロングラン

 天気予報があたって、第1声が始まるころから突風やにわか雨が襲いかかってきましたが、間もなく回復。全国地域婦人団体連絡協議会の川島霞子さん、日本キリスト教協議会前議長の鈴木伶子さん、評論家の吉武輝子さん、音楽評論家の湯川れい子さんたち20人が「平和な社会を子ども世代に残そう」「憲法九条を守ろう」と訴え、合間に、新谷のり子さんや、きたがわてつさんの、心に響く歌声も雰囲気を盛り上げました。
 民主党の岡崎トミ子参議、日本共産党の石井いく子衆議・吉川春子参議、社民党の辻元清美衆議、最後に土井たか子さんも「平和憲法を守り抜こう」と呼びかけ、道行く人々の足をくぎ付けにしました。
 この日は100人を超える女性が駆けつけて、チラシを配ったり、シール投票を呼びかけました。投票の結果は、『9条が今変えられようとしていることを知っていますか』の問いに対して、知っているが104、知らないが14、9条そのものを知らないが2。『9条をどう思うか』については、守るべきが115、変えても良いが11、わからないが3でしたが、ただシールを貼ってもらうだけでなく、若い人に九条の大切さを訴える女性たちの姿が印象的でした。

 

第1回 九条の会 全国交流集会  

6月10日 日本青年館で開催

 全国交流集会には、47都道府県から、草の根で活躍する約800の「会」の代表1550人が参加。午前中の全体会では呼びかけ人のうち、三木睦子さん、鶴見俊輔さん、澤地久枝さん、加藤周一さん、小田実さん、大江健三郎さんの6人が挨拶、地域・分野の代表5人も報告をしました。1400人定員の会場は満席、通路にも人があふれていました。
 午後からは11の分散会に分かれて活発に交流が行 われ、発言は全体で約300人にものぼりました。どの分散会でも、それぞれの地域で、いかに若者を取り込んだ運動を展開していくかが大きなテーマになっていたようです。
 たった9人からスタートした九条の会が、この2年間で、全国に5174もの「九条の会」を誕生させ、それぞれが工夫をこらして、活発な活動を生み出していることを強く印象づける感動的な集会でした。

 分散会終了後に、女性「九条の会」の交流会をいたしました。女性「九条の会」は、現在87の「会」がありますが、その内の「18」の会、36人が参加しました。短時間だったので、ひとり1分という制約の中、元気な活動の様子を伝え合いました。参加されたみなさんは、お互いに元気を共有することができたのではないでしょうか。

 

女性「九条の会」行動提起


★憲法の条文の言葉には、その国の過去の歴史と未来の構想が結びあっていなければなりません。自民党の「新憲法草案」の前文は現行憲法と比べてもあまりにも貧しい語彙と格調の低い文体で書かれています。現行憲法前文がもつ敗戦から立ちあがった日本の市民に、希望と理想を喚起したあのみずみずしさは失しなわれ、憲法の命とも言える21世紀の人権・「平和的生存権」の言葉は、見事に消えてしまっています。憲法9条2項の削除と「国連」の決議抜きでも容認される国際協力の箇所だけがライトに照らされ、日本のアイデンティティであった平和主義は形骸化してしまっています。そこには、心躍る理想のともし火もなく、その実現への歩みに市民の背を押す力もありません。
★昨年6月に発表された自民党の憲法一次草案にみられた「復古調」とナショナリズムの基調は、高度の政治判断の結果、姿を消しました。つまり民主党の改憲に組する人たちを取りこんで、改正案の国会への提案を現実的に目論むものではないか。この憲法改正案に関してはこれまでの自民保守主義から「新自由主義と市場原理主義への構造的転換」と「日米安保同盟の軍事的世界戦略」への組み込みという歴史的意味が指摘されているが、その通りだと思います。
★こまかく見ると、まず憲法前文に「象徴天皇制」の維持を国民主権や民主主義という普遍的価値より優位に置いていることには、大きな違和感があります。さらに、「帰属する国」を「責任感と気概をもってみずから支え・守る義務」のくだりは、国防の義務や愛国心の言い換えではないでしょうか。
★「国際協力」は、国連決議という歯止めがないと、集団的自衛権や人道的武力介入を常に正当化するでしょう。この前文部分が、9条2項の「戦争放棄」条項のカットと結ぶと、日本の自衛隊による国際紛争への介入に道を開き、「安全保障」を軍事中心に傾斜させていく。これまでの輝かしい“殺すな”という非軍事の文化の風土は喪失してしまうでしょう。市民のコントロールがきかなくなります。不戦・平和の文化は軍事・暴力の文化へと変質します。そのもとで個人の暮らしも、社会の風土も脅かされるようになっていきます。
★新しい人権が新設されてはいますが、12条は、権利は「常に公益及び公の秩序に反しないよう」行使する責任を負うと書かれている。後段の「公の秩序」がきわめて規制的である。表現の自由も、集会の自由も、個人の尊厳も、すべてが公の秩序という「ものさし」で測られると、市民の自由は、権力の縄で縛られ、窒息しかねません。もともと憲法は、市民の自由と権利を権力者からの侵害から守るための防壁の役割を持つ。これを立憲主義というけれど、自民党の憲法草案の基調は、市民の行為規範へと、憲法の原理を変質させようとしている。
★いまこそわたしたちは、改憲に反対し、今の憲法を暮らしのなかで、呼吸しつつ生きぬき、活かしていくことが大切である、と思う。

[行動提起]
1、 各地域・分野で九氏の呼びかけ「アピ-ル」に賛同 する女性をひろげ、行動する女性を増やしましょう。
2、 大小さまざまな学習会を開き、広範な女性の方々と 積極的に対話しましょう。当面、県段階の女性「九条 の会」の結成をめざしましょう。