女性「9条の会」ニュース29号 2014年4月号
 
1面

 放射能はダブルチェックで!    翻訳家 池田香代子


 先頃、「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」が、原発事故によるガンの増加はまずないだろう、という報告書を出しました。
 ほっと安堵した方もおられる反面、「そんなはずはない」と眉をひそめた方もおられる気がします。無理もありません。世界の約八十人の専門家が議論をかさねた結果が信頼できないのか、と言ってすまされない傷が、私たちの社会にはまだなまなましく口を開いています。
 むしろ、権威筋だからこそ信じられないのです。発災直後の混乱状態のさなか、政府や東電が出す情報や説明が不適切に思え、私たちは苛立ちと憤りを強めました。なにも信じられない、私たちがそう断じるに足る失態を、責任ある人びとは重ねたのです。
 中には適切だったこと、仕方なかったこともあったと、今ならわかります。けれど、いったん社会的信頼性が失墜してしまったら、これをとりかえすのは並大抵のことではありません。
 鍵は、私たちが参加するダブルチェックだと思います。食品の安全に不安を抱いた市民が、あちこちで放射性物質の測定所を開きました。勉強して、計って、食べる食べないは自分たちで決める。行政の測定と大差ない計測値が続けば、行政への一定の信頼をとりもどす。これは、行政任せにしておきながら「信じられない」と不安に立てこもるのではない、新しい動きです。
 行政も、市民が監視しているとなると緊張感をもちますし、公表のしかたにも真剣さが加わります。評価を受ければ、仕事に熱が入ります。「考えてみれば、計っている保健所の人も地域で生活してるんですよね」という、ある市民測定所で聞いたことばが忘れられません。
 私はここに、新しい市民社会を見ます。原発事故に限らず、複雑で科学技術的に高度化したこの社会では、私たちは忙しいけれど、たゆまぬ知識吸収と一歩踏み込んだ参加を求められている。それが広く実感されたのは、山ほどのマイナスのなかに生まれた一筋の光だと、私は思います。
                                                                    (女性「九条の会」呼びかけ人)
 
   

2面 

孫崎 享氏 の 講演 より

 3月21日の午後、「戦後史の正体」などの著書で知
られる孫崎享さんを講師にお迎えして「戦後史から見
る今」というテーマで講演会を開催しました。会場と
なった武蔵野公会堂の会議室には溢れんばかりの人々
が集い、講演後も多くの質問が出され、熱気溢れる集
会となりました。


戦後史から見る今

■潰された政治家

 鳩山さんは普天間で失脚したわけですが、鳩山さんだったら原発の再稼働はしません。消費税は上げません。秘密保護法も集団的自衛権もやりません。尖閣の問題も鳩山さんなら緊張はつくりません。一つ一つの問題を見たら、安倍さんよりも遙かにいい。しかし、多くの国民は安倍さんを支持して鳩山さんをダメだと言います。もう一人小沢さん、民主党が勝つと思ったときに、西松事件が起こりました。検察が必死になって起訴しようとしていました。しかし彼は無罪でした。「次の日本を担うと思われる人を、無罪になる人を、検察が起訴をしようとして政治生命を絶った。こんなことは民主主義国で許されることではない。これはいったい何なのか」これは、ニューヨークタイムズの東京支局長が言った台詞です。
これはいったい何なのか。戦後一貫して日本の政治を貫いている本質なのか。1945年の敗戦時から見ていこうと思い調べました。
 すると、日本の政権は敗戦直後から、アメリカ追従路線と、自主路線(ナショナリズムを含む)との間で揺れ動いてきましたが、自主路線派はアメリカ(軍産複合体)や、それにつながる日本の経済界、官僚などによって潰されてきました。鳩山さんや小沢さんもその流れの中で潰されたのです。
   
 

問われる日本の民主主義

■日本の大手メデイアは今

 日本の報道の自由は、世界で何番目ぐらいにランクされているでしょうか。「国境なき報道団」が世界のランキングを毎年出していますが、日本は59番目で、韓国より下なのです。
 具体的に見ていきます。
一、福島の原発で水素爆発が起こりました。テレビや新聞関係者は本社の命令で一斉に逃げました。社員を死ぬかもしれない場所に置くわけにはいかなかったからですが、それならそのように報道しなければいけないのです。しかし、その時メディアはどう伝えましたか?「直ちに健康への被害はない」でしたね。国民の生命や人権よりも大切に守らなければならないことがあるという判断は、すべての問題に通じるのです
二、80歳の誕生日を迎えて、天皇の会見が行われました。その中で天皇は「戦後連合国の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法をつくり、様々な改革を行って、今日の日本を築きました。戦争で荒廃した国土を立て直し、かつ改善していくために当時の我が国の人々の払った努力に対し、深い感謝の気持ちを抱いています」と発言されました。よほどこれが大切だから話されたのです。しかしNHKは「平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法をつくり」という部分を報道しませんでした。これを言ったら安倍さんが困るからです。
三、東京都知事選挙では原発が争点になるはずでしたが、争点にはなりませんでした。NHKの朝のラジオ番組で、元外務省にいたコメンティターが、「原発が安いと言われているけれども、本当に安いかどうかを今度の選挙の前に説明したい」と発言したため、放送中止になりました。いろいろな意見があって、それを聞きながら、国民は選択をする。それが選挙なのですが、自民党に都合の悪い報道はさせないのです。
四、秘密保護法についてバーミンガム日本外国特派員協会会長が警告を発しました。「秘密保護法は報道の自由及び民主主義の根本を脅かす悪法である。撤回、または大幅修正を勧告する。開かれた社会における調査報道の真髄は、政府の活動に関する秘密を明らかにし、伝えることである」と。しかしどの新聞社もこの警告を報道していません。内閣広報室に問い合わせると、「あれは内政干渉だから無視することにしました」という返事が帰ってきました。警告を新聞社は知っているのです。けれども報道しないのです。
 そんなメディアになってしまったのです、日本は。

■原発再稼働に対する言論封殺と情報隠し

一、つい最近、ソーシャルメディアの中で、新潟県の知事がこのようなことを言いました。「私は自殺することはないから…、自殺したという報道が出たら、私は自殺することはないと言ったことを思い出してください」と。こんなことを言わなければならないような社会になっているのです、日本はもう。検察を辞めて若干反体制派的な発言をなさっておられる郷原洋行さんも、九州電力の問題に関与したときに、2ヶ所から「暴力団が動くかもしれないから気をつけなさい」と言われたと言います。このように原発に関連して発言した人たちは、職を失ったり、命の危険にさらされたりしています。
二、2005年に石橋克彦神戸大学教授が、衆議院の予算委員会の公聴会で「迫り来る大地震活動期は未曾有の国難である」ということを言いました。彼は、「地震には静閑期と活動期があり、今、日本は活動期に入っている。もし地震があったらインド洋のように大きな津波が起こって大変な事態になるかもしれない。 地震現象は原子力発電所にとって一番恐ろしい外的要因です。原発事故は多重防御システムで安全装置が働いていて大丈夫とも言われているが、地震ではいろいろなところが振動でやられる。それらが複合して、多重防御システムが働かなくなる、最悪の場合には炉心融合とか核暴走が起こってしまう」と、地震が起こる前に言っているのですが、我々は知らないのです。
三、再稼働に関しては今新しい問題が起こっています。川内元議員が、津波が来る前に地震によって原発に問題が起きていたのではないかということを調べています。そのため、原発から東電に来るデータをよこしてくれと言ったら、ファックスが壊れてましたという返事が返ってきた。津波の前にどのような状態になっていたかということは何も調査していないのです。それでいて、「新基準で合格したら再稼働をする」と言っているのです。川内さんは、「新基準では、地震による事故の可能性についての検討課題は示しているが、新しい強い基準を課してはいない。津波についてはあるけれども、合否を決めるに際して地震対策をどうするかということは、新基準には入っていない」と言います。それでいて、今、日本は原発を再稼働しようとしているのです。
 一旦再稼働をしたら日本の経済界が総力を上げて維持しようとするでしょう。今まではいわゆる「原発ムラ」が中心になっていますが、これに加えて金融業界も再稼働の方に行かざるを得なくなってしまいました。福島原発事故の後、東電が潰れそうになった時に、巨額の融資をしてしまったからです。
 その時に、原発と共に行くと決めてしまったのです。この状況で元に戻るのは厳しいことです。一旦再稼働をしたら、もう軌道修正はできないと思います。

集団的自衛権

■日本が米軍の傭兵になるシステム

 お金を払って米軍の傭兵になるシステムです。日本を守るなどというものとは全く関係がないのです。みなさんは日米安保条約に反対の方が多いと思います。私もこれはなくしていくべきだと思っています。でも今、日米安保条約はあります。この第五条に、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続きに従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」、つまり、日本又はアメリカのどちらかに攻撃があった場合は、どちらかの憲法で対応を取ると書いてありますから、一応アメリカは条約上の義務を負っているわけです。新たにつくる必要はないのです。
 集団的自衛権では「日本の管轄地に対して」というフレーズを取り払います。「相手が攻撃してきたとき」という縛りも取り払います。イラク戦争は相手が攻撃してきましたか。していませんね。「イラクには大量破壊兵器があるから、攻撃してくるかもしれない、やられるまで待ってから攻撃するのは危険だ」と言ってアメリカはイラクを攻撃しました。相手がまだ攻撃していないときに米国が倒しに行くのです。北朝鮮、イラン等も対象に考えています。よく、「集団的自衛権で日本の安全を確保する」と言いますが、全くのウソです。これによって日本の安全は危うくなってくると思います。例えば、新幹線が爆破される等とは誰も思っていません。でも、日本人がイラク戦争に、アフガニスタンの戦争に参加していたら、当然報復しようと思うでしょう。具体的にロンドンやパリで爆破事故がありました。日本には本来そんな危険はないのです。それを招こうとしているのです。

 

TPP問題

■ISD条項(投資家対国家間の紛争解決条項)は主権を揺るがす

一、メキシコでは、政府がアメリカ企業に廃棄物処理施設の許可を与えたが、有毒物質による近隣の村の飲料水汚染等で癌患者が多数発生するなど、危険性が提訴されたため、地方自治体が施設利用を不許可処分にしました。しかしアメリカ企業がISD条項で訴え、メキシコ政府は、不許可処分にしたことに対して1700万ドルの罰金を要求されて払ったのです。
二、薬品には副作用があり、その調査を充分しなければなりません。カナダではアメリカのイーライリリー社という製薬会社の薬品に対して、臨床実験が十分でないとして許可を与えませんでした。するとこの会社がカナダ政府を訴え、カナダの最高裁判所まで行った結果、会社が敗訴しました。しかし会社はISD条項で訴え、カナダ政府は1億ドルを要求されました。
 こんなことが起こるのです。国家の主権というものがなくなるのです。
日本では最高裁が一番上ですが、その上にISD条項があるのです。

 

尖閣諸島をめぐって

■棚上げの合意はあった

 1979年5月31日、読売新聞は社説で「尖閣諸島の領有権問題は1972年の時も、昨年夏の日中平和友好条約の調印の際にも問題になったが、いわゆる「触れないでおこう」方式で処理されてきた。つまり、日中双方とも領土主権を主張し、現実に論争が〝存在〟することを認めながら、この問題を留保し、将来の解決に待つことで日中政府間の了解がついた。それは共同声明や条約上の文書にはなっていないが、政府対政府のれっきとした〝約束ごと〟であることは間違いない。約束した以上は、これを遵守するのが筋道である。尖閣問題に関しては慎重に対処し、決して紛争の種にしてはならない」と書いています。読売新聞が
ですよ。
 今、日本政府は日本には棚上げはないという立場をとっています。外務省もそう言っています。しかし、浅井基文・元中国課長は「〝棚上げ〟は省としての共通理解でした」と証言し、栗山尚一元駐米大使(1972年当時条約課長)もインタビューで、「(72年の日中首脳会議で尖閣問題について)この問題は無理をしないで、棚上げしましょうということで暗黙の了解が日中の首脳間にできたということは、その通りだと思うんです」と証言しています。棚上げの合意はあったのです。

■領土問題の利用価値

 2012年だと思うのですが、中央公論に三輪さんという人が「尖閣で日本はガンバレ、そしてF35を買いなさい、イージス艦を買いなさい」という、クリムナーという製鉄財団の人が言った台詞を書いています。今、中国に対する日本国民の反発を利用すれば、アメリカの軍産複合体や安倍政権はやりたいことができるようになります。集団的自衛権を認めること、アメリカにプラスになるように軍事費を増強させること、辺野古への移転をさせること、これらがやりやすくなるのです。

■ポツダム宣言と領土問題

 もう一つ、日本はサンフランシスコ条約を締結しました。8月15日にポツダム宣言を受諾、9月2日に
降伏文書に調印しましたが、そこには「日本の主権は本州、九州、四国、北海道とする。その他の島々は連合国側が決めることとする」と書いてあります。サンフランシスコ講和条約では千島は放棄したのです。それだけではなく、吉田首相が前日に「クナシリ・エトロフは南千島」と言っているのです。だから北方領土で日本が要求できる可能性はないのです。しかし、アメリカは日ロ間に対立感情を持たせるために、この問題を曖昧にしてきました。

■ 私たちにできること

 上野千鶴子さんの講演が行政側から一方的に中止されましたが、女性たちの声で講演ができました。そういうことが大切だと思うのです。原発がなぜ今動いていないのか、首相も経済界も動かしたい、にもかかわらず動いていないのは、首相官邸前で、連日人々が抗議を続けているからです。もうひとつ、ぜひソーシャルネットワークに入ってください。ツイッターは、見るだけでなく、「リツイート」というものを使って自分の仲間に発信し、その人たちが又発信する。そうやってネズミ算的に仲間を増やしていけるのです。
ネズミ算的にどんどん広がって行くのです。情報を単に受け取るだけではなく、発信していく能力を各個人が持つということです。


     伊丹万作著「戦争責任者の問題」

・多くの人が、今度の戦争でだまされていたという。おれがだましたのだといった人間はまだ一人もいない。

・日本人全体が互にだましたりだまされたりしていた。(略)

・新聞報道の愚劣さや、町会、隣組、警防団、婦人会といったような民間の組織がいかに熱心にかつ自発的にだます側に協力していたか。

・専横と圧制を支配者に許した国民の奴隷根性とも密接に繋がる。

・我々は、いま政治的には一応解放された。しかしいままで、奴隷状態を存続せしめた責任を軍や警察や官僚にのみ負担させて、彼らの跳梁を許した自分たちの罪を真剣に反省しなかった

 ならば、日本の国民というものは永久に救われるときはないであろう。

・ 「だまされていた」といって平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。

 

   伊高村光太郎著『智恵子抄』

・日本はすっかり変りました。あなたの身ぶるひする程 いやがってゐた あの傍若無人のがさつな階級がとにかく 存在しないことになりました。

・すっかり変つたといっても、それは他力による変革で (日本の再教育と人はいひます。)内からの爆発であなた のやうに、あんないきいきした新しい世界を命にかけて

しんから望んだ さういふ自力で得たのでないことが あなたの前では恥しい。

・あなたこそまことの自由を求めました。求められない 鉄の囲ひの中にゐて、あなたがあんなに求めたものは、

結局あなたを此世の意識の外に逐ひ、あなたの頭をこ はしました。あなたの苦しみを今こそ思ふ。

・日本の形は変りましたが、あの苦しみを持たないわれ われの変革を あなたに報告するのはつらいことです。

                                                             (1947 年版)

 

 

 

 

 

 

 

   
 

 

 

 

 

 

 

 

   
 

    上原 智子

  今月19日、沖縄の名護市長選で稲嶺進氏が再選を果たした。歴史的な勝利だった。名護市民ではない私たちも固唾をのんで結果を見守ったが、夜8時の投票時間終了と同時に当確の情報が流れたとき、身体の底からわき上がる喜びと深い安堵感で満たされた。
 ご存じのとおり、名護市は、1996年に日米両政府が普天間飛行場の返還を合意し、移設先を名護市東海岸の辺野古と決めたことによって、20年近くも市民を二分して翻弄されてきた。今回の市長選は、辺野古移設「推進」と「反対」の対立軸が明確となった初めての選挙であった。相手候補は、仲井真沖縄県知事や政府・自民党の全面的な支援を受けて、政府とともに移設を推進し、米軍再編交付金や経済振興策で地域の活性化を図ることを堂々と主張した。
 争点が明確となり名護市民は敏感に反応した。告示後の世論調査では、男女を問わず、移設是非を争点と考える人が過半数を超えた。名護市民の知人は、こんなことを言っていた。
「交差点で親子が稲嶺さんを応援する手作りの横断幕のようなものを持って立っていたり、稲嶺さんに手を振るために高齢の人が家から走って出てきたり、すごいのよ。本当に頭が下がる。」と。私も、カンパを手に稲嶺氏の後援会事務所を訪れる市民を何度も目にした。多くの市民が子や孫の未来を真剣に考え、自分たちの大
事な選挙だと考えていた。
 昨年末、仲井真知事は、埋立承認と引き替えに政府から多くの約束を引き出したとして、「良い正月が迎えられる」と満面の笑みを浮かべた。私たちは、名護市長選の勝利でようやく「良い正月」が迎えられた。安倍政権は、しかし、辺野古移設に向けてあらゆる手段を使ってくるだろう。厳しい道のりを覚悟している。
 さて、都知事選。日本の人口の一割を擁する都知事の役割(権限)と存在感の大きさはいうまでもない。横田基地を抱え、日本の安全保障問題とのかかわりも深い。残念ながら名護市長選から何か引き出して言えるだけの能力は持ち合わせないが、都民の良識によって、平和憲法をまもり生かしていく都知事が誕生することを心から願っている。  
    

県民はどんな裏切りにも崩れなかった    野村美佐子    
・ 沖縄県民は68年間、基地あるが故の事件事故で苦しんできました。米軍人、軍属による犯罪検挙数は復帰から09年までで5747件、強姦事件の検挙数は127件で、告訴しないケースも多く実数は更に多いのです。
 県民は先の沖縄戦で4人に1人が殺されました。70代以上の女性が子育てを終えた今になって、PTSDに苦しんでいることが問題になっています。「米兵に撃たれ倒れた妹を置き去りにした」「畑に米兵が来て自分は隠れたが、逃げ遅れた女性が米兵に強姦された。何もできなかった」などの光景が基地の爆音や少女暴行事件の報道などでフラッシュバックして自分を責めるのです。沖縄県にいると、戦争は過去のものではなく現実なのです。建設工事で地面を掘れば不発弾が出てくる、空にはファントムやオスプレイが日常的に飛び交っている。県民は長い間の基地の苦しみと、基地の利害で二分されていた悲劇を経て「これ以上基地負担は許さない」という総意を超党派で勝ち取り、昨年一月の建白書に結集したのです。しかし、安倍政権はアメリカと一緒に辺野古への新基地建設を強行に押し付けてきました。新しい基地を誘致するのか、拒否するのかが争点になった名護市長選は、まさに政府と県民の戦いでした。安倍政権は膨大な金と人を投入し、恫喝や振興策で名護市民を揺さぶりました。しかし、こうしたやり方に対する危機感や怒りが逆に大きくなり「こんなやり方は許せない」「石破幹事長も県知事もうそつきで信用できない」と公約を守り抜く勇気の人「稲嶺進さんの再選を」は必死の思いになりました。政府の圧力に屈せず、人間としての尊厳と民主主義を守り抜いた名護市長選の勝利は、いかなる圧力をかけようとも民主主義に反するやり方は成功しないことを示しました。沖縄県民の総意はどんな裏切りにも崩れず「新基地NO」の民意は安倍政権に打撃を与えることになるでしょう。

沖縄のこれからと私たち   ─私たちはどう支援していけるか  田場祥子

  沖縄県名護市長選で新基地建設反対の稲嶺進氏が再選されました。前回の選挙では対立候補とは1500票余の僅差でしたが、今回は4155票の差をつけての堂々たる当選でした。稲嶺市政は〝基地がなくても安定した市政〟を掲げ、政府からの交付金に頼らない市政を進めてきました。「ふるさと納税」制度を活用して名護市を応援する人もいます。「普天間基地の移転先は県外に」と公約した仲井真知事の年末ぎりぎりの裏切りに怒った名護市民の勝利です。この選挙に自民党が膨大な金額の官房機密費を注入するといううわさもありました。でも名護市民は札束には負けませんでした。
 思えば長い道のりでした。1995年9月、米軍海兵隊の兵士3人による少女暴行事件に端を発し、続く怒りの沖縄県民総決起大会、SACO合意(沖縄に関する特別行動委員会)による普天間基地の移転問題。市街地の真ん中に位置する米軍普天間基地は、県民の生命・財産を脅かしている世界一危険な基地と言われており、米国本土ではありえない立地です。その結果移転先と名指されたのが名護市東海岸にある辺野古でした。97年1月、辺野古では命を守る会が作られ、おじぃおばぁは、めぐみの海を守るために立ちあがります。
 その年の12月、名護市民投票で50%を超えた住民は海上ヘリ基地建設拒否。2004年、海上阻止行動開始、辺野古に全国から支援の人々が訪れました。新基地に対する建設拒否の行動は辺野古のテント村でいまも続けられています。(2014年1月31日現在・座り込み3575日)
 選挙直前の1月10日、新外交イニシアティブ(ND)主催の「普天間基地返還と辺野古移設を改めて考える」(稲嶺市長もパネラー)が開かれ、1000人収容の名護市民会館はあふれ1200人の参加者がありました。
 当選後、辺野古のテントへ電話を入れともに喜びました。「これからが辺野古も高江も正念場です。田場さん、また座り込みに来てくださいね」
辺野古に通い始めて今年は10年になります。   (VAWW RAC)


■女性「九条の会」呼びかけ人、世話人のエッセイ集をお手元に!

 2012年5月に発汗しましたエッセイ集「あした天気になあれ─原発・戦争のない社会へ祈りを込めて─」には、池田香代子、内海愛子、江尻美穂子、大原穣子、小山内美江子、北沢洋子、坂本福子(故)、羽田澄子、本尾良、湯川れい子、吉武輝子(故)、渡辺えり、井上美代、関千枝子の14人の方が書かれています。吉武輝子、坂本福子さんは、原稿が来てから間もなくお亡くなりになりました。女性「九条の会」への最後の言葉となりました。
 まだお読みになっていらっしゃらない方、お子さんやそのお連れ合い、お孫さんやお友達にプレゼントなさりたい方は、ぜひごれんらくください。
贈呈いたしますが、在庫がなくなり次第終了とさせていただきます。ただし、送料はいただきたいと思います。1冊〜4冊は80円、5佐津〜8冊は160円
一橋大学の渡辺治氏の「3,11語の日本のゆくえと憲法の生きる社会の展望」についての学習会記録も掲載しています。読んで得する1冊です。
ご注文は女性「九条の会」事務局まで。

■訃報
 
女性「九条の会」の呼びかけ人のお一人、小林カツ代さんが
一月二五日にお亡くなりになりました。
小林さんは女性「九条の会」が発足して間もなく発病され、私
どもは一日も早いご回復を願っておりましたので残念でなり
ません。
ご冥福をお祈りいたします。