女性「9条の会」ニュース17号 2011年4月号

1面                  

  第55回国連婦人の地位委員会(CSW55)に出席して
                           江尻美穂子さん(元日本YWCA理事長)

 

 国連婦人の地位委員会(UNCommission on the Status of Women―日本政府は、現在も正式名称として、「婦人」の地位委員会と称しているが、NGOでは最近は「女性」の地位委員会と称することが多い)は女性の地位向上を目指して、女性の権利と平等を確立、促進するため、1946年に設立された。今年も2月22日から3月4日までニューヨークの国連本部で委員会が開催され、日本政府代表として橋本ヒロ子十文字学園女子大学教授が参加された。この委員会には選挙により45カ国から4年任期で、委員が選ばれる。日本政府は選挙運動を活発に繰り広げ、CSW委員国となる努力をしており、ほとんど毎年委員国として参加している。代表には男性が選ばれている国もあるが、日本は代表として常に女性を送っている。また、近年、国際婦人年連絡会、国連NGO国内婦人委員会、日本女性監視機構(JAWW)から、政府代表団の中に少なくとも1名を顧問として派遣している。本年はJAWWから田中正子氏が顧問として参加されたが、この費用は全部NGOの負担である。
 今年のCSWのテーマは「教育、訓練、科学および技術に女性の進出を増進させる」というものであったが、私どもは日本国連代表部の協力を得て国連の会議室を借り、来年のテーマである「農山漁村女性のエンパワーメント」を先取りして、外国の方も多く交え、活発なパネルを行った。さまざまなNGOが主催する数多くの興味深いパネル討議は、政府代表団による国連の会議と並行して、国連本部と道を隔てたチャーチセンターを中心に行われた。 私は、第2週目に台湾出身で、世界精神保健連盟の委員をしている旧知のチェンさんに急に頼まれて、「職場における女性の精神健康の増進」というパネルにパネリストとして参加したが、インターネットで日本の関連統計資料などを調べて、何とかその責を果した。 
 本年は国連ビルが修理中ということで、仮の建物ができていて、そこで政府間会議や各国主催のパネルが行われたが、このビルに入るためには、人数制限があり、毎日入場カードを各NGOに先着順で1枚配布されたが、それを得るためには毎朝早めに出かけて並ぶ必要があり、今回はずいぶん並ぶために時間を費やしたように思う。しかし、世界中の女性たちが、「平等、開発、平和」を目指して努力している姿を目の当たりにして、参加者はおおいにエンパワーされたのである。

2面                    

今こそ親米傀儡政治からの脱却の時    池田香代子さん (翻訳作家)


 第二次世界大戦後、米国は西側の盟主となりました。世界中に基地を展開し、さまざまな戦争を引き起こしてもきました。冷戦終了後、唯一の超大国となった米国は、グローバリゼーションを掲げて全世界を単一の市場へと組み込んでいこうとしました。
 けれど、ゆるぎないかに見えた米国の単独覇権は、完成した時にすでに崩壊が始まっていたのでしょうか。9.11事件以来、戦争や金融危機がひきもきらず、異常気象のための不作が恒常化しています。米国を筆頭に先進国はどこも財政難のために通貨をじゃぶじゃぶ供給し、あまったマネーは投機に流れて農産品市場にも流入し、食料を高騰させています。中東の独裁国は、生活物資を安く供給することで政治的不満を抑えてきましたが、この食料高騰でそれができなくなった。すると、一挙に政府批判が始まって親米政権も次つぎと倒れ、あるいは危機に瀕しています。
 今、「アメリカの帝国主義」という言葉は、「アメリカの単独覇権主義」と違わない意味で使われています。けれど、そもそも帝国は植民地をもつものです。でも米国は、フィリピンを手放したあとは、北マリアナ諸島やグアム島、プエルト・リコなどの「自治的・未編入領域」はあるものの、いちおう植民地はもっていません。植民地なき帝国アメリカは、その代わりに親米傀儡政権を作り、政治的経済的軍事的、さらには文化的に従属さ
せ、米軍基地を置きました。軍隊を駐留できて政府が言いなりなら、植民地経営の負担から逃れながら実質的には植民地をもっていることになります。これは、新しいタイプの植民地支配です。
 米国は、もちろん戦後の日本にも傀儡政権を画策しました。それも戦争中から。1942年の「ライシャワー・メモランダム」には、「ヒロヒト天皇は米国の政策実現のための最良の傀儡となりうる」と書かれていました。この国にサウジアラビアやヨルダンのような、王が政治的な実権をにぎった「天皇による傀儡政権」ができなかったのは、天皇の戦争責任を問う国際世論にあらがってまで「天皇国ニッポン」をつくるのは得策ではないと判断したためでしょう。けれど、米国の帝国のまなざしは、日本を傀儡をいただく新型の植民地と見て、その経営にいそしんできたのだと思います。
 私たちはこのたびの政権交代で、どんな政権も米国の意向に背けば潰される、潰されたくなければ、ぶざまなほど米国の便宜をおもんぱからなければならないことを思い知らされました。でも、いや、だからこそ、中東革命が米国の傀儡政権をゆるがせているように、この国でも、米国の傀儡となるしか政権を維持できない新植民地であることを峻拒する、そうした動きが出てこないものでしょうか。
 その昔、すべての道はローマに通ず、と言われました。ローマ街道は、ローマ帝国が属州を武力で支配するための軍事施設です。その維持費用が、属州からの経済的利益を上回るほどになったことが、ローマ帝国滅亡につながりました。今米国では、海外基地の縮小が議論されています。その維持が、破綻に瀕した国家財政をおおきく圧迫しているからです。ローマの落日と重なります。
 そんな今こそ全国の、とりわけなんと言っても沖縄の米軍基地について、私たち主権者が真剣な議論をする時にきていると、私は思います。在日米軍基地は、傀儡政権の後ろにひかえる人形遣いである官僚組織の権力の源泉としては合理的でも、私たち誰の利益の道具にもされたくない市民、わけても基地の被害をこうむっている市民にとっては、とことん非合理なものでしかありません。

3面 

DVD「カナリア島9条の碑」を見ませんか

 3月12日の女性「9条の会」の学習会で、最初に「カナリア島9条の碑」というDVDをお見せする予定でした。
 一昨年、ドキュメンタリ-映画『シロタ家の20世紀』(藤原智子監督)の中でこの碑のことが紹介され、テルデ市のサンチアゴ市長のインタビューも入り多くの人に感銘を与えました。藤原監督はこの碑が、単なる思い付きでできたのでなく、この島の人々が、フランコ政権のもと苦しんだ歴史から平和や核廃絶に強い関心を持ち、10年もかけてこの碑を作ったことを知り感動しました。
 スペインの南、大西洋の真ん中、アフリカに近いところにカナリア諸島(スペインの自治州)があります。この中のグランカナリア島のテルデ市という小さな町に「ヒロシマ・ナガサキ広場」という小さな公園があって、そこに「日本国憲法9条の碑」があります。ヒロシマ・ナガサキの名を冠した広場や通りはほかにもありますが、「9条の碑」は世界でこれが『唯一』です。そこで、女性「9条の会」でクリアファイルを作りましたとき、この碑の写真を使わせていただきました。
 市長のインタビューは映画の中で数分に編集され、紹介されましたが、藤原監督は映画では使わなかった部分の市長の話を捨てるにはあまりに惜しいと思い、このほどそれを10分のDVDにまとめてみたそうです。
 DVDを見ると、絶対の平和は日本国憲法9条の理念でしか達成できない。日本人は世界に『崇高な理想』を示したのだ、ということが語られています。市長の言葉は確信に満ち、まさに9条の精神の原点のようです。近頃、「武力に頼らなければだめではないか」など物騒な考えが増えている日本の人々に鉄槌を与えているようです。日本から遠いこんな小さな島の人々が平和を考えつづけ、「9条しかない」という結論に達したことは感動的でもあります。
 このDVDは、女性「9条の会」の集会などで見る機会をつくる予定ですが、地域のグループでの研究会、東京から遠いところの会などでご覧になってもいいかと思います。時間も10分で、手ごろです。地方の方などで、学習会などで使ってみたい方は、藤原監督のほうに連絡ください。市販品ではありませんが実費2000円で分けてくださるそうです。
    電話03ー3702ー1965

原子力発電所の作業員は「奴隷」か?

 福島第一原発で、3人の作業員が被ばくし、大量の放射線を浴びた。彼らが下請け会社の作業員で、作業の危険性についてよく説明も受けておらず、長靴さえも支給されておらず、たまっていた放射能いっぱいの水が短靴の上からしみ込み被ばくしたという話にはビックリした。下請けの会社はどんなに作業が危険でも仕事が切られることを恐れて断れないとか。ワーキングプア、非正規雇用横行の現在の問題を表しているとも言える。
 2003年6月8日付けのエル・ムンドというスペインの新聞を翻訳した記事をネット上で見つけた。「福島第一原発では、ホームレスが清掃人として使われている」というものであった。「30℃から50℃の間で変化する内部の温度と、湿気のせいで、労働者達は3分ごとに外へ息をしに出なければならなかった。一人、また一人と、男達は顔を覆っていた防御マスクを外した。めがねのガラスが曇って、視界が悪いからだ。時間内に仕事を終えないと支払いはされない。」と記事は報告している。
 それを裏付ける手記を発見した。1級プラント配管技能士として20年原発で働いて来られた、故平井憲男氏が語る内部告発である。
 建設当初、厚い鉄でできた原子炉も大量の放射能をあびるとボロボロになるので、10年で廃炉、解体する予定だった。しかし1981年に10年たった福島原発1号機で、廃炉・解体が出来ないことがわかった。ロボットも放射能のために狂ってしまい、人の手でやるには放射線量が強過ぎるからだ。この時はアメリカのメーカーが自国の作業者を送り込んで、強度の被ばくをさせながら原子炉を修理した。
 原発は1年に一度定期検査をする。原子炉には70〜150気圧という圧力がかけられていて、配管の中には300℃もある熱湯や水蒸気がすごい勢いで通っているので、配管の厚さが半分くらいに薄くなってしまう所もある。そういう配管やバルブを取り替えなくてはならないのだが、この作業には必ず被ばくが伴う。そういう仕事をする人の95
%以上はまるっきりの素人、出稼ぎの人だ。(多分ホームレスも。)そういう経験のない人が、怖さを全く知らないで作業をする。それらの人に対して「原発は安全」という洗脳教育を20年近くやってきたという平井さんは、どれだけの人を殺したことかと苦しみつづけ、ご自身も癌に侵され1997年に死去された。東電の体質は建設当初から少しも変わっていないようだ。      文責小沼
 

                         ●●●〈私たちのまちの女性9条の会〉の近況●●●

◆西宮女性9条の会(兵庫県) 
 昨年10月9日、ビデオ「女性国際戦犯法廷の記録」上映会をおこないました。
 60年間も「知らぬ」で放置した日本政府は許されない、とたくさんの感想が寄せられました。
 11月28日には『「慰安婦」問題解決に向けて』と題して、元慰安婦のハルモニたちが生活する
 「韓国ナヌムの家」よりハルモニを招いて証言集会を開きました。
「西宮女性9条の会」のシンボルシールが出来上がりました。1シート300円(2シート500円)です。

◆楠見子連れ9条の会(和歌山県) 発足にあたって
 私たちは、子どもたちが生きる未来に世界中から戦争がなくなることを願います。
そして日本が戦争する国にならないよう、まず私たちにできること、憲法9条の大切さを学びた
いと思います。つぶやきに共感を。ため息に希望を。小さな疑問を大きな議論に。
今年7月9日本番の「ぞうれっしゃ」の歌をうたいませんか、と呼びかけています。

◆宮城女性九条の会
 第18回憲法講座を「なぜ、衆議院の比例定数を減らすの」と題して、3月5日開催しました。
 講師は、弁護士の山田忠行さん。まとめを作っています。
 5月7日に、学習会「9条ってなあに」を予定。講師の弁護士さんに、まず質問を寄せて、それ
 らを含めたお話をしていただく計画です。
 8月には「慰安婦」問題、11月には「夫婦別姓」をテーマにした催しを計画しています。

◆ねりま24条の会(東京都)
 安倍内閣の時に、24条を見直す案が出されたことをきっかけに生まれ、定期的に学習会を開き、
 女性の雇用問題や貧困の問題、平和の問題、暴力の問題などを幅広く学びあっています。また年
 に一度パネルを作成して男女共同参画センターのフェスティバルに展示しています。


※ニュースに載せますので、あなたのまちの「女性9条の会」の近況をお知らせください。